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「夜って言うのもあるけど、普通の学校とはちょっと雰囲気が違うから。まぁ、ゆっくり慣れていけばいい。ちょっと浮世離れしたクセの強い奴らが多いが、まぁ悪い子達ではない」
曜は前を歩きながら言った。
クセの強すぎる教師を前に、さっそく二人はこの学園の浮世離れ具合を実感していたのだ。どの口で言っているのだろうか、若干、二人はそう思っていた。
「俺もここで働き始めた頃は吃驚する事が多かった。もう慣れたけどな」
「…」
「…」
二人は微妙な目で彼の背を追っていた。
彼が動く度に良い匂いがする。甘く、華やかな香りだった。恐らく香水だ。そう確信が持てた。見た目からして、教師じゃなくてこの人は確実にホストなんじゃないか。二人はそう思いそうになっていた。
苺摘はふと彼の左手に目がいく。左腕には金属感のあるゴツめな腕時計が着いていた。そして薬指には腕輪があった。まさかの婚約者なのかと苺摘は驚く。
見るからに遊び人のような雰囲気を纏わさているのに、意外だった。ぼうっとそれを見ながら歩いていると、ふと曜が教室の前で立ち止まった。
「ここがお前らの新しいクラスだよ」
先に入るから、呼んだら来いよ。
そう言って曜は教室へと入っていった。
「すっげぇ、不良教師感」
「…わかる。でも、既婚者みたい」
「指輪してたな。人って見かけによらねーわ」
他人に興味がなさそうな波旬ですら思わず言葉を零していた。苺摘は波旬の言葉に心の底から頷いた。
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