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「そう! そのまま視線こっちに! もっと屈辱的に喘いでみて!」
カシャカシャとカメラのシャッターをきりながらそんな注文を出しているのは、ベテランカメラマンであり、自らの師匠でもある男だ。その横で、新人アシスタントの鐘崎遼二は、唖然としたように事の成り行きを眺めていた。
憧れだった人気写真家の氷川白夜に付いてから今日で一週間になるが、男が陵辱に喘ぐ――こんな設定の撮影にどう対処してよいか分からずに、アシストどころではないというのが正直なところだった。
「おいこら、遼二! ボサッとしてんじゃねえ! その板、もうちょい傾けろっつったろ!?」
「あ……は、はいっ! すいません……!」
撮影用のレフ板を持ったまま硬直している様子に、師匠の氷川から怒号を食らっても、おいそれとは思うように動けずにモタモタと戸惑うばかりだ。
黒いスーツ姿の男たちに脱がされて辱められている白スーツの彼は、すぐそこの手の届くところで組み敷かれ喘いでいる。
視線をどこにやっていいかさえ分からないというこんな状況で、レフ板がどうのなどと言われても思ったようには動けない。オタオタとするばかりで、遼二は頭の中が真っ白になっていた。
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