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なんてこった――!
女相手ならまだしも男のこんなシーンに反応してこのザマだなんて、信じ難いを通り越して驚愕だ。言っちゃなんだがこんなことは初めてだ。
「ちょっと休憩にしたら?」
どうにも身動きすら出来ない新人アシスタントの様子に、周囲の皆がクスッと笑いながら口々にそんなことを言っている。その気配りは有難いが、謝罪の言葉さえ咄嗟には思いつかなかった。
「仕方ねえよな、今日が初めてだってんだもん。ちょっと刺激が強すぎたんだよなぁ?」
「大丈夫か、兄ちゃん?」
などと、黒スーツの男たちが次々に声を掛けてくれるのが本当に有難くて、申し訳なくて、だが未だに硬直と緊張は解けてくれそうにもなくて、遼二はガックリと肩を落としたままその場に固まっているしかできなかった。
そんな様子に呆れるかのように、背後からクスッと鼻先で笑われたような気配を感じて振り返れば、そこには侮蔑めいた横目にこちらを見つめている一人の男の視線――。白いスーツの男だ。
手際の悪いこちらの失態にやれやれといった調子で軽く溜め息を漏らしている彼は、今しがたまで悶えながら恥辱の嬌声をあげていた男とは思えないほどに印象が違う。
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