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「何? もしか撮影見てて興奮しちまったの、あんた?」
まるで挑発するかのようにグッと顔を近づけながらそう言った彼の仕草に、より一層頬の熱が増すような気がした。
――立ち上る甘い香りがグラグラと脳神経を揺さぶり、目眩を誘う。
素人はこれだから困る、といわんばかりの苦笑まじりに呆れ果てた態度をされても、何故か彼から視線が外せない。
恥ずかしいと思う気持ちよりも、悔しいと思う気持ちよりも、彼への興味の方が先立って呆然となっている自らの気持ちの方がよほど驚愕だった。
ここは官能写真集の撮影現場だ。
廃墟を模ったセットの中に無数の照明やコードが散乱、配置している。
やれやれと言って休憩をうながした師匠の氷川をぼんやりと目で追いながら、新米アシスタントの遼二は、まるで夢幻の中にいるような心持ちで呆然と佇むのみだった。
- FIN -
※次、エピソード「魅惑の彼」です。
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