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癪香
「今日はちょっと予定してたよりもハードにいくぜ」
その日、一之宮紫月はいつも以上に意気込んでいた。
「へぇ? 随分気合い入ってんじゃねえの。ハードっていうと具体的にはどんな?」
仲間内からの問い掛けに、羽織っていたガウンの袷をゆるめると、不敵な笑みと共にそれを開いてみせた。
「お前、それ……」
「マジかよ。いきなり?」
ガウンの下は全裸だった。
「下着も付けねえ気か?」
瞳をパチパチとさせながら唖然とする仲間たちを前に、紫月は今一度ニヤリと笑った。
「俺の役どころは”裏社会の組織を裏切った幹部”って設定だ。お前らは俺を追って来て拘束する組織の一員、要するに頭領の手下だ。その後、俺はお前らに犯られちまうってな話筋だが、今回は”やらせ”は一切ナシにしてもらうぜ」
「――ていうと?」
無論、大まかなそのストーリーなら誰もが承知だ。先日も同じシチュエーションで既に一度、撮影は済んでいるからだ。だが、今日はその動画版を撮るということで、より細密な打ち合わせの最終確認をしているというところだった。
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