プロローグ

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この世には、男女の性別の他に、何事もにも優秀なα、平凡なβ、性に縛られるΩという性があることを小学6年生の性差診断のときに知った。 αは35人の教室で3人だった。αと診断された同級生は、勉強でも運動でも秀でていた。αであることを自慢することはなかったが、取り巻きが大騒ぎするからクラス中に知れ渡った。 Ωは多分僕だけ。性差診断の通知が自宅に届き、βと書かれていると思っていた両親は明らかに動揺していた。 一人息子がΩであることを、βの両親は受け入れられないようだった。 Ωは男女共に妊娠可能で、3ヶ月に一度発情期がある。発情期のΩからはαを誘うフェロモンが出ていて、αを狂わせる。発情したΩのうなじをαが噛むことで番になり、Ωのフェロモンは番のαしか誘わなくなる。αは強烈な庇護欲が湧くようだ。 今は発情抑制剤が開発され、発情はコントロールできるため、発情といっても微熱が出る程度だ。他の性と変わらない生活が送れるが、差別意識は消えることはなかった。 一部のΩが自分の発情を武器に、αを狂わせ、強制的に番わせているのも差別が消えない原因の一つなのかもしれない。 僕はΩであることを一切武器にしないで、βのように堅実に生きたかった。子どもたちの成長に関わる仕事に就きたいと、努力して大学に入ったのに。 僕の性は僕の意思に関わらず、僕の運命を捻じ曲げる。
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