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「それはそれは……。それでは今回は挨拶程度で終わった……という事ですね?」
『そうだね。でも、らご兄に言われていた事、大体当たっていたよ!犯人の能力が“想像力”だって事や、もし能力者なら【明日良 比不等】の遺伝子を持った者だっていう事。更には比不等チルドレンであるなら、多重人格障害であるって可能性についてもどうやらビンゴだったみたいだしね』
電話の向こうの、兄を尊敬してやまないといった計都の明るい声。
聞いている蘇摩の目元も自然と緩む。
しかし……計都の言葉の中に、“予測力”を持つ自分ですら思いもしなかった単語が含まれており、蘇摩は自身のシャープなラインを描く顎にそっと人差し指の甲を当てて呟く。
「……多重人格障害、ですか」
『うん。その推測の根拠は僕には分からないんだけど、らご兄がそう言ってたからカマをかけてみたんだ。そうしたら、明らかに様子が違っていたしね』
「なるほど……。それで英麗は大丈夫ですか?」
『……うん。正気を取り戻してからだいぶショックを受けていたけど、吉祥の力や、ミトやセシリアの励ましでだいぶ落ち着いてきたみたい。まぁ、正気を失っていた時の記憶は薄らとしか覚えていないみたいだけどね。きっとすぐに元通り働いてくれるよ!』
「それは何より。……恐らくその能力者の青年をこちらが無理に引き留めなかった代わりに、英麗の事も不問にするよう、ミトが三村管理監に話を持ち掛けたのでしょうね。どうせ映像も記録して残してあるのでしょうし」
『あはは!さすが蘇摩!分かってるね!……で、今らご兄は?』
「ああ。羅喉なら……」
蘇摩はそう言いながら、伏せていた瞼と長い睫毛をすっと持ち上げる。
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