【暗転】She know

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【暗転】She know

『事件解決ご苦労であった、霧雨』 「手柄は全て安倍家当主、霖雨(リンウ)様のものにございます」 『重畳、重畳』  霧雨篠は薄暗い倉庫の中、密談を行っていた。  安倍霖雨。現代を生きる陰陽師達の総本山、安倍家の現当主。警察に根を張る霧雨篠の、真の雇い主。 「私は全ての安倍を愛する者――」霧雨篠は詠うように呟く。「貴方も、貴方の御子息方も例外ではございませぬ。故に我が身命を賭してでも、必ずや貴方方に福を授けましょう。それが私の役目ですから」 『期待しておるぞ、狐』 「はっ」  電話の前で恭しく頭を垂れる。電話が切れたのを確認すると、霧雨篠はディスプレイを眺めながら呟いた。 「――貴方は雫しかお認めになられないでしょうが、霞もまた、愛しい安倍の嫡子。私は愛しましょう。ですが――ふふ」  霧雨篠は紅唇をつり上げ、独り妖しく笑った。 「愛しさと憎しみは紙一重だと、くれぐれもお忘れなきように。飼い犬ならぬ狐に手を噛まれないように、ね……?」 【to be continued...】
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