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「それでも、お腹が空いたと訴えれば、母親はパンとかお菓子とか冷凍食品とか、何かしら出してくれた。でも、お風呂は母親が入るときじゃないと入れなくてね。母親は私のことを気にすることはほとんど無かったの。父親は母親がちゃんと私を育てているんだと思っていたらしくて、私が痩せすぎていたり、歩き方がおかしいって気にしていて、成長がおかしいから病院で検査してもらえ、とかよく言っていたんだけど。母親は適当に異常が無かったとか言っていたらしいの」
つまり、父親は子育てにノータッチで母親任せだけど、当の母親は澪に無関心で放置状態だったということなのだろうか?
そして、ふたりとも目の前にいる澪のことは可愛がる…………?
でも、外に出たことはないんだよね?
つまり、父親がいても出かけたりしないの? 一度も?
どうも、おかしな状態だったということしか伝わってこない。
「私はさ、小さいころから容姿には恵まれていたんだよね。だから、傍にいたら可愛がってもらえた。だけど、目の前にいないと無関心なんだよね、両親とも」
ずっと宙を見ながら、どこか空想話でもしているような目をしていた澪だったけど、ふと私と目が合って我に返ったような表情をした。
「ごめん、なんかペラペラと。異常すぎて、言いたいことあるでしょ?」
「いや。言いたいことっていうか、疑問はたくさんあるんだけど……」
そうは言ったけど、そのあとは言葉が続かなかった。本音は何を聞きたいわけでもないし、聞いたからって何ができるわけでもない。
そんな疑問なんて、ただの興味本位なんじゃないかって思うと、やっぱり聞きたくないとも思ってしまう。
そんな私の気持ちを察したのかどうかは分からないけど、私が何も言わないと、澪が口元を緩めて微笑んだ。
「答えになるのかどうかは分からないけどね。うちの両親は結婚してなくて、父親には別に家庭があったんだ」
別に家庭があって、母親とは結婚していない……?
ということは、不倫関係だけど毎日のようにその家に帰っていたの?
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