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それから、私は寝る前のお姉さん争奪戦には加わらなくなった。
そういえば、去年までいた隣のお部屋のお姉さんは来なくなってしまった。だから、隣のお部屋は今は他のお姉さんがいる。
私の大好きなお姉さんも、きっといつかいなくなってしまう。
幼いながらにも、そこは分かる年齢になっていた。だけど、それを受け入れていたかと言えば、頭では分かっても実際には分かっていなかったのかもしれない。
だけど、その日からは自分の中で理解が出来たような気がする。
このお姉さんは時間限定でここにいるんだって。
いくら大好きになっても、いつか離れてしまうんだって。
そして、恐らくそんなことを感じているからなのか、咲ちゃんや他の子たちは目の前にいるお姉さんに、いつもいつも目いっぱい〝自分を見て!〟と言いながら、お姉さんがいないときには、同じように他の大人に目いっぱい〝自分を見て!〟と言い続けているのだと分かった。
なんだか、それはとっても滑稽というか……、哀れに見えた。
そして、それをお姉さんに向けてずっとやっていた自分も哀れだったのだと、幼いながらもそう感じて傷ついた。
私は強く生きていこう。
お姉さんは大好きだけど、いなくなるんだって知っているんだから。
捨てられた子犬のように、誰にでも尻尾を振るのはやめよう。
どうせお父さんもお母さんも私を好きじゃないんだから。
私が私を好きでいてあげないといけない。
だけど、哀れな自分なんて好きになれない。
だから、強い私であり続けるんだ!
恐らく、幼いながらもそんなことを考えたように記憶している。
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