一・ルームメイト

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 夕食の乗ったトレーを運びながら、ニコニコと愛想を振りまいて男子たちに自然に声をかける澪の姿が目に飛び込んできた。  それを見ながら、私は彼女が咲ちゃんの姿と重なった。  石坂君はイケメンのスポーツマンで、澪に一途な明るい優しい男子だった。  恐らく、恋がしたい女子なら誰もが憧れるような理想的な彼氏像のような人。  だけど、そんな彼氏がいても満足できず、ちょっと親しい男子という存在を求める澪は、底なしに愛情を欲しているように見えてしまう。    そんな風に感じてしまうと、なんだか冷めた気持ちで澪の後ろ姿を見てしまう。  哀れだな。  それでも、欲しても欲してもなかなか手に入らないという一般的な子たちとは違って、愛されるということが彼女には難しくはないんだろう。それは、声を掛けられた相手の反応からよく分かる。  彼らは綺麗な彼女の存在自体が嬉しそうだし、そんな彼女に微笑まれるだけでまた嬉しさアップという印象だった。  そんな澪を見て、周りの女子たちが面白くなさそうな顔をしたり、ひそひそと何かを話しているのも感じた。澪はもちろん、そんな外野の様子を気に留めることもないから、余計に女子たちは腹を立てるのだろう。  こんな振る舞いを普段から学校でもしているなら、そりゃ、ろくでもない噂ってものも立つのだろう。
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