一・ルームメイト

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 こんな変な注目を浴びている中で、澪の隣に座って夕食をとるのは気乗りがしなかったけれど、一応ルームメイトとして案内がてら一緒に来たのだから、ここで隣に座らない方が不自然で感じが悪いだろう。 「ちょっと気まずいなあ、こんな状況って」  正直にそんな愚痴のような言葉がこぼれ落ちて、苦笑いしながら澪の隣に座った。 「なにブツブツ言ってんの?」  澪は全く動じない様子で、だけどどこか企みを感じるような笑顔でこちらを見ると、くすくすと笑いながら割り箸を割った。 「複雑な顔してんな、佐山」  ふいに前の席にトレーが置かれて、背の高い男子が爽やかに登場した。男子寮の副寮長である、二年生の藤川隆哉(ふじかわたかや)だった。入寮当時から、なにかと気にかけて話しかけてくるどこか熱血の先輩だった。 「あっ、イケメン」  思ったことをそのまま言葉にしたようで、澪が真顔で隆哉先輩を見たけど、特に取り繕うこともなく平然としている。 「ありがとう。時々言われるな、それ」 「へーえ、謙遜しないんですね」 「まあね。キミもなかなか可愛いけど、それなりに自覚してんだろ?」 「そうですねぇ。私も言われ慣れているのかも」  客観的に見たら若干引いてしまうような会話をするふたりを横目に、私はそこには加わらずに黙々と箸を進めた。 「ああ、そうか。キミは入寮してきた佐山のルームメイトの望月か。残念だったな、佐山。一人暮らしは終了だ」 「別に残念だなんて思っていません。ルームメイトがいた方が寂しくないですし」 「ハハハッ。そんな玉じゃないだろ、おまえは」  実際は隆哉先輩の言っている通りの気持ちだったけれど、そんな言葉は澪に失礼だし、だいたいこの先輩に私のなにが分かるんだって気持ちになっていた。  私の中ではそこそこ好感度は高い隆哉先輩だけど、ちょっと構いすぎなところがあると感じていた。  普通にそのまま、私たちの前に座って食べ始めているし。向こうで待っていた先輩の友達が仕方が無さそうにこっちに来るじゃない。気が付いていないのかな?
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