55人が本棚に入れています
本棚に追加
「あっ、玲ちゃん、ここにいたの? 部屋に迎えに行ったらいなかったから」
同じクラスの相沢絵里がニコニコと近寄ってきた。そうだった、いつも絵里と彼女のルームメイトの田辺琴美と一緒に行動していたのをすっかり忘れていた。
「ああ、ごめんね。今日、ルームメイトが来たから、案内がてら先に来ちゃっていた」
「ルームメイト? ああ、澪ちゃんじゃない。寮に入ったの?」
「うん、今日から。そういえば、絵里も寮生だったね」
澪が恐らく女子向けとみられる可愛らしい笑顔を見せた。これは、絵里には好感を持っているということだろう。と、ほんの少し一緒にいただけで、クルクルと変わる澪の表情で彼女の内面が分かるような気がしていた。
「知り合いだったの? 絵里と澪」
「うん、翔ちゃんが石坂君の友達だから。ときどき合流して一緒に話したりするんだよね」
無邪気な表情で絵里がにっこりと笑う。おっとりしている彼女は女の子らしいほんわかとした雰囲気で、人の悪口も言わないし計算するようなタイプではないから一緒にいて楽だった。
だから、きっと彼氏同士が友達じゃなかったとしても、澪もそんな絵里には好感を持つのだろうと思えた。
「じゃ、琴美ちゃんがあっちで待っているから、今日は別々に食べよう。お風呂はまたいつも通り迎えに行くね」
絵里は笑って手を振ると、琴美が待っている窓際の席の方へ戻って行った。
そして、私の周りの席には澪の他には、隆哉先輩の友達がゾロゾロと移動してきていることに気が付いた。
最初のコメントを投稿しよう!