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隆哉先輩の友達はみんな、新しい寮生で誰が見てもかわいい澪が気になっているのが分かっていたけれど、澪はその視線は完全無視で私の顔を見た。
「お風呂って、部屋になかった?」
「部屋にもあるけど、寮の地下にもあるの。天然温泉が出てんの、聞いたことない?」
「へえ、温泉なんだ。じゃあ、私も今度入りに行ってみよう」
今度ってことは、普段は部屋のお風呂を使うということね。私はシャワーで済ませるとき以外は、ほぼいつも絵里たちと温泉に行っていた。
まあ、彼女と私は一緒に行動を共にするタイプじゃないから、今日は一緒に行動しているけれど、そのうち澪も自分の友達と行動するようになるだろうと思った。
「ここの温泉、なかなかいいよ。俺は毎日入っているもんな」
「露店風呂もあるから、晴れた日は星なんかも見えるしな」
「キミ、名前なんていうの?」
私たちの会話が途切れた途端に、割り込むように二年生の男子たちが澪に話しかけてきた。
「へえ、露天風呂まであるんですね。私、今日から入った望月澪です。よろしくお願いします」
意外と自分を作らず、普通の態度の澪はその方が私には魅力的に見えた。可愛らしく作るのが面倒だったのか、それも計算だったのかは分からないけれど、その場にいた男子たちのハートを射止めたのはよくわかった。
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