二・トラブルメーカー

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 本人の意志が伴っているのかどうかは分からないし、その真偽さえも私にはよく分からなかったけれど、一年女子の中では望月澪という人は学年一のトラブルメーカーなんだと認識されていることが分かってきた。  気遣いが出来て美人のうえに自分を可愛く見せるテクを持っている澪は、男子のあこがれ的な存在なのは、気をつけて見ていればすぐに分かった。当然、彼氏である石坂君は彼女しか見えていないくらい入れ込んでいた。  だけど、他の男子にも色目を使っているようにも感じるため、とにかく女子たちには不評だった。  澪といつも一緒にいるF組の友達は三人いて、みんながみんな派手目の子だった。彼氏が複数いるとか、彼氏を作らず遊び歩いているとか、そんなことを公言している子もいて、その四人グループ自体が一部の女子たちからは敬遠されていたようだ。  今日は私と同じB組の女子が泣いていて、理由を聞くと「望月澪に彼氏を誘惑された」と言った。 「彼が数日前に〝好きな子が出来た〟って言ったから別れたの。それはね、仕方がないと思ったの。だけど、今日になって〝望月が俺を好きみたいな素振りをしたけど、お互いに相手がいなかったらなあって言うから、おまえと別れた〟って。〝でも、望月は彼氏と別れる気もなければ、俺のことを好きでもなかった。俺はおまえを好きだったのに〟って言うの。だけど、もう戻れないよ。望月澪が彼に色目を使わなければ、私たちは何の問題もなかったのに……」  そうなのかなあ? と、そのときの私は率直に思った。  それって、彼氏の心に問題があるんじゃないの? って。  ちょっと綺麗な子が言い寄ってきたからって、すぐに彼女と別れちゃうなんておかしい。  だけど、同じようなことが何度もあるようで、その話を聞いたら周りの女子から芋づる式で色んな話を聞かされた。同じサッカー部の誰それに色目を使って、だけどあっさり振ってしまい、彼氏の石坂君と揉めたくなかった将来有望選手だった彼を退部に追いやったうえに彼女にも愛想をつかされた、とか。  同じF組の何とか君に、二年生のなんとか先輩に、告白してきた他校生の男子に……。とにかく、色目を使って好きな素振りを見せておきながら、結局は石坂君と別れる気もなくあっさりと振ってしまう。そして、彼女がいた男子は別れてしまったことが多く、その彼女がお怒りで、彼女がいなくても振られた男子を好きな女子からは非難の嵐だった。  入学してたった二ヶ月あまりで、よくもまあ、こんな有名になるほど男子をその気にさせて、そして振ることが出来るもんだと驚いてしまうくらいだった。
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