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だけど、それだけの魅力が澪にあるというのもよく分かってきた。
男子ウケするように作っている部分もあるけれど、同じ部屋で一緒に暮らしていると、ナチュラルにいい人だなって思うことも多々あった。
「ねえ玲香、洗濯しに行くけど、洗濯もの出してくれたら一緒に洗っておくよ」
夕食前の空き時間、部活から帰ってきたばかりで疲れているはずなのに、澪は自分の洗濯物を洗濯かごに入れながら、二段ベッドの上で本を読んでいる私を見上げた。
その言い方が「コンビニ行くけど、ついでに何か買ってくるよ」みたいな感じで、あまりにも自然だったから面食らってしまった。
「えっ、いいよ。そんなの自分でやるし」
「けど、今はやるつもりないんでしょ? 私は洗濯室に行くから。ついでだから出しなよ」
「いいってば、本当に。そういうのは自分でやるもんだよ」
「知っているよ、そんなこと。次は私のを洗えとか言わないから大丈夫だからね」
そんなことを警戒したわけじゃなかったし、その真意が分からなかったのだけれど、屈託なくケラケラと笑っている澪を見ていると、本当にただついでに洗ってくれるつもりなんだと思えた。
「だって、そんなに洗濯物があるわけじゃないのに、数台しかない洗濯機を独占するわけだからさ。ふたり分洗った方がいいんじゃないかなって。水も電気も時間も半分で済むしね」
「ああ、そうだね。じゃ、私も一緒に行く」
いつも洗濯はお風呂のあとにしていたから、別に今は洗濯する気分でもなかったけど、そんな話を聞くと一緒に洗濯機に入れた方が省エネだな、なんて思ってしまう。
「フフッ、流されたなあ、玲香」
「流されたというか、賛同したんだよ、澪の考え方に」
こういう自然体の澪は好きだった。妙にフェロモンを出していたり、なにか企んでいるような小悪魔な表情の彼女は異質な感じがして、いつも一歩引いてみてしまう癖がついてしまっているけれど。
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