一・ルームメイト

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 だけど、それから分かっていったのだ。お姉さんは〝帰って行く人〟であり、ここで私たちの面倒を見てくれているのは〝お仕事〟なんだってことを。  私がショックで打ちのめされたまま、仕方がなくベッドに戻って布団をかぶると、物音で目覚めたのか、隣のベッドに寝ていた同い年の(さき)ちゃんが起き上がったのが見えた。 「あら、咲ちゃんも起きちゃった?」  おばさんが声をかけると、咲ちゃんは眠そうな顔でうなずいた。 「ねえ、おばちゃん。咲が眠るまで、お手てつないでいてくれる?」  私はそれを聞いて驚いてしまった。だって、その言葉はいつもいつも咲ちゃんがお姉さんに言っていることと、まるっきり同じだったのだ。 「あらまあ、夜中に目が覚めて恐くなったのかしらね」  おばさんはクスクスと笑いながらベッドの横に座ると、言われた通り咲ちゃんと手を繋いであげていた。  咲ちゃんは誰でもいいの? お姉さんじゃなくても、一緒にいてくれるなら誰でもいいの……?  そんな気持ちが私の心の中をグルグルと回っていった。
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