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第二話
「ねえ。いつ“始末”してくれるの?」
付き合い始め頃から、理沙は優しい口調で、僕の背中越しに手を回しながら尋ねていた。
この時も、前回、“そ、そのうちにね”と躱してからもう2週間経っていたはずだ。
口調は優しいけど、振り返った時に合った理沙の視線は、いつも怒気を帯びていた。
この時も僕は身震いしたのを悟られないよう、「こ、今度、必ず」と努めて明るく返していた。
だけどいつも納得いかないのも事実。
いくら理沙だといえ、言っていいことと悪いことがある。
何度も急かされていうちに僕は、僕の中に芽生えた彼女に対して、ドス黒い感情をいだくことを、躊躇わなくなっていった。
今、社会人三年目の僕が、大学三年生の頃、人生始めてできた彼女が、理沙だ。
東京に出て一人暮らしを始めた僕は、一、二年生のうちは殆ど友達らしい友達もできず、いつも一人だった。
友達作りのためのサークルに入る勇気も持てず、かといって、陽キャが集うような目立つところでバイトもできず、僕は大学が終われば、近所の潰れかけた小さなスーパーで、お年寄り相手にレジを打つ日々だった。
そんな小汚いスーパーに、たまに客として来ていた理沙。
金髪と黒のツートンカラーの長い髪に、いつもグレーのスエットの上下。足元は猫のキャラクターのついたピンクの健康サンダル。
いつも100円以内で買えるような駄菓子を数点買っていくだけの客。
そんな理沙が、ある日スーパーの奥の事務室に泣きながら座っていたんだ。
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