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第五話
家に着いた僕はタオルを渡し、濡れた服を脱いで体を拭くよう促すけど、彼女は動けないのか、息が荒いまま。
僕は緊急避難だと断った上で彼女の服を脱がして髪と体を拭き、洗濯したばかりの僕のジャージを着させて、ベッドに寝かせた。
そして、翌朝。
雨はすっかり止んで、雲ひとつない快晴になっていた。
彼女の熱も下がったらしく、翌朝には元気になっていた。
…だけど、それから、ほぼ毎日。
何故か彼女は僕のアパートに寝泊まりしている。
自分のアパートに帰るたび、何かしらの荷物を持って再び僕のアパートにやってきて、そのまま僕の部屋に置いていく。
そしてある程度の荷物の“移送”が終わった頃。
彼女は自分のアパートに帰らなくなり、正式に僕と彼女、理沙は付き合うことになった。
彼女は僕と同い年。
高校を出て専門学校に入るために上京してきたけど、すでに退学して、フリーターをしている。
実家は西日本の方の新幹線も通っていないド田舎らしくて、滅多に帰ることもないらしい。
彼女は三人きょうだいの真ん中で、できのいい長女と、跡取りとして可愛がられている弟に挟まれて、親からも放ったらかしで、親の反対を押し切って専門学校をやめた時点で仕送りもなくなり、フリーターをしながら食いつないでいたみたい。
そんな健気な彼女…
…だったのに…。
次第に彼女は僕をコントロールしようとするようになった。
僕も当時、それまで自由気ままに一人暮らししていた大学生。
自分のルールと彼女のルールが対立すると、何故か僕ばかりが折れる羽目に…ということが繰り返され、いつしか僕は疲弊していた。
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