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第六話
そして月日は流れ、いつしか僕はその小汚いスーパーに、社員として就職していた。
就職活動するようになって初めて知ったのだけれど、実はこのスーパーのオーナーはこの辺りで様々な事業を多角経営している実力者で、スーパーマーケットも、この小汚いスーパーだけじゃなく、ハイソサエティ向けの高級スーパーも経営している。でもこの小汚いスーパーだけは、地域のお年寄りが気軽に来られるよう、あえて昔ながらの“小さな食料品店”形式で運営しているのだそうだ。
オーナーはスーパー以外にも、スポーツジムやホテルなんかも経営してて、就職する時に他の系列企業への配属を希望することもできたけど、僕はあえてこの小汚いスーパーへの配属を希望した。
大学一年からずっとここで働いていたから愛着も湧いていたし、職場のボロい環境も、慣れてしまえばどうってことなくなっていた。
一方の理沙は…。
自分のアパートは引き払い、相変わらず僕のアパートに住んでいる。
フリーターだったのも、去年たまたまバイトで入った個人経営の小さな工務店の社長に気に入られ、かつ、たまたまタイミングよく事務員に空きが出たらしくて、そのまま社員になっていた。
二人ともアルバイト代しか収入がなかった頃に比べれば格段の差だ。
でもまだまだ贅沢できる水準じゃないし、彼女に言い負かされるのも相変わらず。
それでも僕は、自分たちの稼いだ金で生活できているという事実だけで、そこそこ充実感を感じていた。
まだ若いんだし、このまま二人仲良く暮らしていければ…。
ささやかな幸せを噛み締めていた、そんな時に、それは起こってしまった。
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