24人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
返事
気が付けば夢中で食べていた。
妻の手紙はいつも本当に美味しい。
色々な手紙を食べてはみたが、やはり彼女のは格別だ。
僕の為だけに書いてくれているのだから、当然と言えばそうなのだけれど。
込められた思いが醸し出す味というのは、毎回微妙に違っている。
それは、様々な思いの混ざり具合が毎回違うからで、それゆえに飽きも来ない。
腹も心も満たされる。
手紙の何と素晴らしい事だろうか。
そうだ。後で返事を書かねば。
僕の手紙を、果たして彼女は食べてくれるのだろうか。
「さて、何を書こうか」
窓の外を眺めつつポツリ呟く。
綺麗な青空に鳥が飛んでいるのが見えた。
もうすぐ桜の季節。
そう言えば、花見に行きたいと手紙にも書いてあったっけ。
「久し振りに、帰ろう」
呟いた僕の頬を、開けた窓から入って来た春の風がそっと撫でた。
最初のコメントを投稿しよう!