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実際、ここまで味の濃い手紙だと、ほとんど手を加える必要もないと言える。
今回、彼女が選んでくれた便せんは美濃和紙だ。
美濃和紙は薄くても丈夫という特徴がある。
少々熱をかけても歯応えが残るから、手紙に込められた思いを味わうにはうってつけの紙だと言える。
例えば。少し太めの細切りにして、湯通ししてみるというのはどうだろう。
断面がほつれぬよう、歪まぬよう、丁寧に手早く切る。
湯を沸かし、そこへくぐらせるのは一瞬だけ。
いくら丈夫な和紙とはいえ、煮込んでは台無しになる。
余分な熱が入らぬよう、さっと氷水にくぐらせたら水気を切って食べる直前まで冷蔵庫へ。
さて、味付けだ。
酸味を利かせたツユか、あるいは柑橘系の香りをつけた酢味噌でさっぱりと食べる。
便せんその物の風味や、噛み締めるほどに出て来るであろう想いの味。そしてインクの香り。
そう言ったものを一切邪魔せず、手紙の春らしい爽やかさを引き立ててくれるに違いなかった。
もう一品が姿揚げであることを考えると、口の中を引き締めてくれる酢味噌が良いかもしれない。
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