返事

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返事

 気が付けば夢中で食べていた。  妻の手紙はいつも本当に美味しい。  色々な手紙を食べてはみたが、やはり彼女のは格別だ。  僕の為だけに書いてくれているのだから、当然と言えばそうなのだけれど。  込められた思いが醸し出す味というのは、毎回微妙に違っている。  それは、様々な思いの混ざり具合が毎回違うからで、それゆえに飽きも来ない。  腹も心も満たされる。  手紙の何と素晴らしい事だろうか。  そうだ。後で返事を書かねば。  僕の手紙を、果たして彼女は食べてくれるのだろうか。 「さて、何を書こうか」  窓の外を眺めつつポツリ呟く。  綺麗な青空に鳥が飛んでいるのが見えた。  もうすぐ桜の季節。  そう言えば、花見に行きたいと手紙にも書いてあったっけ。 「久し振りに、帰ろう」  呟いた僕の頬を、開けた窓から入って来た春の風がそっと撫でた。 
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