僕らの愛した青い空

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僕らの愛した青い空

君が見ている空は、本当に青いのかい? そう問うた彼の目はとても不安げだった。 そうだよ。と僕は返した。 彼は青い空を知らない。彼に青は見えなかった。 だから、彼に取っての空は赤褐色らしい。 この青い空の美しさを知ることができない彼を時々哀れに思う。 戦争は残酷なことに世界を焼き払った。 人類の繁栄させた文明は今や生き残った最後の国にのみ残され、それ以外の国に生きる人はこの先生き延びることのみを考えなければならない。 そんな中僕はこうして絵を描く。兵器に使われていた塗料を剥がし、油に溶かして筆に付ける。 そうして描いたそれはとてもじゃないが美しいとは言えないけれど、これを見たがる人はいたから続けてる。 特に人気なのはやはり空の絵だ。 文明は壊され、野は焼けたが空だけは変わらず青い。 そんな空の青に人はかつての平和を偲ぶのだろう。 彼らは僕の描く青い空の絵と僅かな資材を交換してくれる。 今回の彼もその1人だ。 彼はかつて科学を学ぶものだったらしい。 そんな彼も戦争の後、青色を失って久しかったのだろう。 彼は少々の食糧、それとかつての貨幣と交換したその絵を抱いてもの寂しそうに帰っていった。
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