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扉の向こうに見えたのは狼やドラゴン、ましてや兎でも無い・・・人であった。
「おや、見たところ揃って腰を抜かされているようですが、どうされたのでしょうか?私めに何か粗相がございましたでしょうか?」
扉の外で男は高級そうな漆黒のスーツの袖や裾を見ると、シミ一つない純白の手袋を付けた手で胸ポケットから手鏡を取り出すと、真っ赤なネクタイや細いチェーンで繋がったフレームの細いメガネ、髪一本乱れる事無くきっちり整えられた七三の黒髪と順に乱れが無いか確認し終わると、最後に汚れ一つ無くピカピカに磨かれた靴を少し傾けて、こちらに向き直り一歩部屋の中へと踏み進んだ。
男は部屋に入ると美しい所作で一礼をした。それを見て何故か居た堪れなくない気持ちになって、隣で未だに警戒しているシュガーの頭共々下げた。
姿勢を戻した男を見ると、とても身長が高い事に気づいた。
(オッサンも結構デカかったけど、この人はそれ以上かもしれない)
そんな事を考えていると、男が徐ろに口を開いた。
「Clearおめでとうございます。お疲れの事とは思いますが、皆様お待ちでございます。ご案内させて頂きますので、ホールまでご移動お願い致します。」
男は銀色の懐中時計を確認しカチリと音を立てて閉じるとそれを懐に仕舞い、行先の方向を腕を広げて指し示した。
俺とシュガーは向かい合うと目と目で会話が出来るような一体感を感じた。
(コウジ、油断するな。オイラはまだコイツを信用できねー)
(分かるがここに居ても始まらない。取り敢えずついて行ってみよう)
「分かった、ついて行くよ」
貴重な人間に会えたんだ、この機会を出来るだけ有効に使いたい。言葉が通じるというだけでどれ程の好機かという事を今まで痛いくらい学んできたんだ。必ずものにする!!
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