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男の少し離れた後ろをついて俺とシュガーは歩いた。部屋を出ると長い廊下をひたすら歩いた。灰色のレンガ造りの廊下には窓一つ無く、等間隔で両サイドに蝋燭が灯され、天井からシャンデリアが吊るされており、それらの明かりが暗い廊下をぼんやりと照らしだす。床の真ん中に轢かれた真っ赤なカーペットを踏んで俺達はひたすらに歩いた――。
※ ※ ※
あれからどれ程歩いただろうか・・・
歩いても歩いても同じ廊下が続くばかり。
よく考えたら窓やドアが一つもない無い廊下などおかしいのではないか?
この男も優しそうな笑顔をしているが、貼り付けた仮面のように全く表情が変化しない。この建物も男も品はあるが何処か薄っぺらい。
何だか胡散臭いな、隙など無いがここは距離をとって離れた方がいいかもしれない。
そう思った時だった、男が急に足を止めたのは。
余りの急な停止に俺は危うく男の背にぶつかりかけた。
「うわあ!すまねー、オイラよそ見してた」
どうやらシュガーは止まり損ねたようだ。男の足にぶつかった頭を罰が悪そうにかいている。
すると男は変わらずあの表情で微笑みかけ、シュガーの乱れた毛並みを撫で整えた。
「いいえ、声をお掛けしなかった私めの不手際です。申し訳ございませんシュガー様」
「えっ、何で」
「何故シュガーの名前を知っている!シュガー離れろ!コイツ何か変だ!」
俺の声を聞いてシュガーは床を蹴ると、ひとっ飛びで男の手の下から俺の居る後方へ距離をとった。
すると男は、逆上するとも動揺するでも無く、空いた右手を寂しそうに懐へ持っていくと懐中時計を開いた。
「丁度お時間のようですね、ではどうぞ」
懐中時計を閉じる音と同時に男の隣に大きな扉が現れた。男がエスコートするように頭を下げて扉の中へ入るよう促すと、木製の細かな装飾で彩られた大きな扉の真ん中にすっと光のラインが走った。それはどんどん広がる。あっという間に両の扉はいっぱいまで開かれ、辺り一面が真っ白になった。俺は余りの眩しさに両手をかざしたが、それでも目が開けない程の光で、俺は只その場でシュガーの名を叫ぶ他何も出来なかった。
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