過去[4]

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過去[4]

その日、私は大学の午前中で授業を終え、午後からは取らなくても良い講義が重なっていたから、夕方のバイトまで帰って時間を潰すことにした。 私の住むアパートは女子大生限定の物件ということで住民は女子しかいない。 たまに清掃のおばさんを見かけたりすることもあるが、セキュリティは万全で2重ロックは当たり前に付いているし、それに加えよく見る内側に倒して使うU字ロックも勿論備わっている。 さらに防犯カメラも完備されていて、アパートの中に入る為の鍵もあったり、防犯セキュリティはかなりのものだった。 その上家賃は5万円台というものである。まさに学生様々であった。 当然、それらのセキュリティへの新鮮味による感動は最初のうちだけで、毎日やっていたらかなりの億劫さを覚えるのだけれど… しかし、今日の感じは少し違っていた。 アパートの駐輪場へ自転車を停め、そこからアパートの通路へ通じるにも扉があり、その鍵を開けて入る。 そして階段を2段階で昇っていき、3階、302の扉。 通路も階段も、そして玄関前までもが常にカメラに監視されている。 その扉に設置された上と下に分かれた鍵を開けるのだが、何故かこの日はいつもの億劫さではなく、やはりよく出来ているなと感心を覚えたのだった。 自室に入り、1Rの狭さに上手く設置したソファへ腰掛けると、やがて目の前が薄暗くなり少しの睡眠に入る。 アラームをかけていないことは分かっていたから、なるべく意識を保ちつつ、浅い眠りを意識して寝に入った。 意識はあるように思えたはずなのに、何故か脳内にはいつもの幻覚の様子が入り込んでくる。 昼寝ごときの睡眠で明晰夢を見たのはこれがはじめてのことだった。
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