過去[1]

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過去[1]

それは今から8年前、2024年の6月。私が小学校時代に経験した奇妙な出来事があった。 私の家は、両親が不規則な時間での勤務をこなしており、家に帰ると2人ともいる日もあれば、勿論いない日もあった。 そのせいからか、小学校の高学年に分類される5年生に上がるにつれて、私はスマホというものを持たされた。 家には固定電話があるのだけれど、私は塾に通ったり、外へ遊びに行くことも多かったからだと思う。 大抵はおばあちゃんが迎えに来てくれるから、スマホを使うのは自然と遊びや友達への自慢に使うことが多かった。 と言っても、通信制限と呼ばれる機能で何か大したことが出来るわけじゃあなかったんだけど。 それでも小学生の世界じゃ、それは物珍しい代物だった。 スマホを持ち始めて半年ほど、私は公園に設置された、通称"クラブハウス"と呼ばれる、言わば勉強やちょっとした団欒ができるエントランスのような場所で、かなちゃんと、えりちゃんの3人で持ち前のスマホで遊んでいた。 周りにはカードゲームをする大人と群がる子供達、絵本を読み聞かせする親子、ゆっくり休憩する老夫婦と、いつもよく見る顔触れが揃っていた。 そんな時、私達の元へ1人の見慣れないおじさんが顔をひょっこり出したのだ。 「おや、珍しいねぇ。今は携帯電話をこんな小さな子供も持つんだねぇ」 そのおじさんは見た目50過ぎくらい、背の低いぴょろっとしたおじさんで、頭にはこの暑い時期に何故かニット帽をしていた。 私達がぽかんとした後、その少し不気味なおじさんを遠のき、すぐさま逃げた。 「あ、あの人。絶対やばい人だったよね。あんなに鼻の下伸ばしてさ…今の時期にあんな帽子被って…はぁはぁ」 私達のリーダー的存在であるかなちゃんは息を荒らげながら言った。 私は後ろを振り返ると、おじさんが追いかけてくることは特になかった。 「そもそも、あのおじさん。どこから出てきたの?急にひょっこり現れなかった?」 えりちゃんは記憶を辿りながら言った。 「さあ?でもとりあえず、追っては来ていないし、あっちの公園で遊ぼ!」 私は2人の手を引っ張って、公園へと向かった。
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