仙助の受難・・・①

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仙助の受難・・・①

   信太郎の離れの部屋の前は、小さいが趣のある白砂の庭になっている。    その敷き詰められた白砂が、朝の光をたっぷり含んで宝石のように輝いていた。  僅かに開いた障子から、その眩いほどの光が部屋に差し込んで、信太郎の下肢を明るく照らす。   信太郎は羞恥にまみれた顔で仙助を見ると、「閉めて……」とか細い声で、障子の方を仰ぎ見た。  着物の前を広げ、ゆるく胡坐(あぐら)をかいた信太郎の前には仙助が居た。  きっちり正座した上に拳を作って、信太郎を舐めるように見ていた仙助は、信太郎の訴えを鼻で笑って退(しりぞ)ける。 「何を言っていなさるンだ。部屋に光が入らなくっちゃぁ、見えるものも見えませんよ」  本当は、障子越しでも十分部屋の明かりは取れている。だが仙助は、信太郎の羞恥心を煽る為にそのまま放っておくことにした。 「そんな事より、あんまりぐずぐずしていると、庭師の方々が来ちまいますよ。今日は月に一度の剪定の日ですから。若旦那のあそこを、野郎どもの前で(さら)すことになる。あぁそれとも、むしろそちらの方がいいのかな?何ならこれからひとっ走り母屋へ行って、店の者全員、今からここへ集めて参りやしょうか」  冗談とも本気とも取れる仙助の物言いに、信太郎の顔の血の気が失せた。  その今にも死にそうな顔を目にすると、仙助の中に潜んでいた狂暴な野性が鎌首をもたげ、今まで心に(まと)っていた理性を面白いように切り裂いてゆく。  仙助は流暢(りゅうちょう)な言葉で信太郎をやり込める(おのれ)の姿に、恍惚とした喜びを覚えていた。  つい先日(せんじつ)までは、夢にも思わない光景だった。 「さ、早くしてくれませんかね」  仙助が鋭い眼差しで先を促すと、信太郎は震える手で自身の(ふんどし)に手を掛けた。  しゅる、と紐が解かれる音がして、ながく垂れた前垂(まえだ)れが、花弁が散るように畳の上に舞い落ちた。  包まれていた白木木綿が取り払われて、男のそこがうやうやしく仙助の前に(さら)される。  その刹那、仙助の眼が釘付けになった。    慌てて手を添えようとする信太郎を払いのけ、仙助は(はや)る気持ちを抑えられず、そこを焦げ付くような眼差しで隈なく見詰める。  申しわけ程度の繁みの下に伸びる、楚々とたたずむ品の良い魔羅(まら)。  色といい形といい、全てが仙助の理想どおりだった。  まるっきり子どもという訳でもない。  丸みを帯びた亀頭はちゃんと張り出ているし、全体的に小ぶりだがしっとりと質量もありそうだ。  だが何より仙助を最も(とりこ)にしたのは、その色味だった。  誰の手垢も付いていない鴇色(ときいろ)の魔羅は、まるでもぎたての水蜜桃(すいみつとう)(ごと)く、(あで)やかでみずみずしかった。 ―美味そう……  不意に()ぎった自身の本音に、仙助は瞠目(どうもく)した。  今自分は、一体何を考えたのか。  いくら理想の魔羅が突如目の前に現れたのだとしても、この持ち主は、あの小生意気な若旦那なのだ。  思い出せ。  思い出せ。  仙助は懸命に今まで信太郎にされていた数々の嫌がらせを頭に巡らすもの、一向にそこから眼が離せない。  その間に、今まで一度も感じ得なかった肉欲が、仙助の中でむくむくと湧き上がる。  先ほど自ら切り裂いてズタズタになった理性では、到底太刀打ち出来ない勢いだった。
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