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理性崩壊
「痛……ッ」
信太郎の悲鳴じみた声がして、仙助は咄嗟に目を開けた。
まざまざと眼前に広がる、驚きのその光景。
その光景に、仙助は心の臓を撃ち抜かれたように身体が傾きそうになる。
剥き出しになった信太郎の魔羅に、鮮血が滴り落ちている。
もちん、今まで何もつけずに無理矢理剃っていたからに違いない。
だが今はその要因よりも、なぜ信太郎の魔羅が先程より勃ちあがっているのか、という事だ。
度重なる刺激に、徐々に心地よくなってしまったのだろうか?
桃色から更に薄紅に色味を変えた魔羅は、よりふっくらとして艶めきが増している。
その匂い立つような魅惑の形は、心なしか揺れ、まるで仙助に向って手招きをしているかのように見えた。
とたん、胸が苦しくなって、体中の血が逆流したような感覚に陥った。
全身が強い酒に酔ったように熱くなり、腰が抜けそうほどの興奮が、仙助を支配する。
「は、はは。やっぱり嘘だった。全然、慣れてないじゃないですか。こんな所傷つけて――」
仙助はこの時、己のこめかみがブチッと音を立てて切れたのを初めて聞いた。
気づいた時には信太郎の足元に跪き、揺れる魔羅を咥えていた。
流れ落ちる血を舌で絡めとり、驚きで暴れる信太郎の膝がしらを掴んで、仙助はいいように舐めまわしていた。
「ちょっ……何す……」
急に何が起きたのか未だ判然としない信太郎は、股の間に居る仙助を強く押した。
だが情欲の獣と化した仙助の力は人ならざる者の如き強さで、ちょっとやそっとではびくともしない。
「やめろ……ッ!き、汚い。そんなとこ、舐め……、んあ、やめ……」
押しては返す波のように、二人の攻防は暫し続いた。
しかし、初めて味わう他人ひとの口の中の温かみ、舌先の心地よさ。
その極楽へ誘う仙助の舌技に抗う事は到底できず、信太郎は乱れ始めた。
熟れた水蜜桃の先からは蜜が溢れだし、仙助がそこを舌先でくじいて啜ってやると、身悶え、喘ぎを堪えるように強く唇を噛み締める。
「うっ……んっ……んっ……」
杓子定規の喘ぎどころか、懸命に声を漏らさない様に耐えるそのさまが、更に仙助の劣情を煽ってくる。
仙助は先に言っての通り、川端に咲く野菊のような控えめな男が好みだ。
喘ぎ声も同様で、必死に耐える姿を目にすると、どうにかしてもっと感じさせてみたくなる。
仙助は押さえていた信太郎の膝がしらから手を離し、剃ったばかりの下生えに手を伸ばした。
傷口はそれほど深く無かったようで、指先に濡れる感覚は既に無い。
少しばかりチクりとするのは、剃刀の剃り痕あとのせいだろう。
痛々しいそこを仙助は、道端の子猫を愛でる様に指の腹で撫で上げた。
口淫を施しながら、幾度も幾度も優しく撫でてやると、頭上に感じる信太郎の吐息が深くなり、小さく途切れた信太郎の鳴き声が、眩い光の部屋に響き渡った。
「あっ…あっ…あんっ…あっ……あっ……」
―鳴け。もっと、もっと
毛並みを撫でていた仙助の長い指が下へ伸びてゆき、信太郎の魔羅の付け根の双果をやんわりと揉みしだく。
仙助は仕上げとばかりに魔羅を喉奥まで咥え込むと、信太郎の鳴き声に強い戸惑いの色が混じった。
「あっ…あっ…だめっ…だめっ…。へんっ…やっ…。で、でちゃう。も……っ」
カランと手元から剃刀が落ちた音がして、不意に仙助の鬢にしなやかな信太郎の指が差し入れられた。
構わず頭を上下しながら口淫を深めていると、その指が優しく仙助の鬢を梳き、信太郎の嬌声きょうせいはより一層高まった。
「やぁっ…あっ…あぁ……ッ!」
仙助は口で信太郎を犯しながら、自分の鬢を撫でる指先の優しさに、唐突に泣きたいような気分に駆られた。
こんな風に、信太郎に優しくされたのはこの時が初めてだった。
やがて口の中に温かみのある苦い味が広がると、仙助の凝り固まっていた心が、急激に溶けていくのを確かに感じた。
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