0人が本棚に入れています
本棚に追加
喧嘩の熱が引き、頭も冷えた。
仲直りの方法を考え始めて、三日が経つ。
俺は悪くない、何も悪くない。彼女のため、彼女のためなんだ。
その意識が、筆を勢い良く走らせるのに充分なエネルギーになって、ちょうど応募のあった賞に送ることもできた。
皮肉なことだが、彼女とぶつかったことで頭がスッキリしていた。ここまで書けたことについての感謝と、傷つけたことへの謝罪を伝えたい。
だが、彼女は帰ってこなかった。
一週間が過ぎ、二週間、三週間と月日ばかりが過ぎていく。
電話をしてもコール音ばかりが鳴り響く。かと言って、彼女の実家に電話をするわけにもいかない。
浮気や事故の可能性も考えたが、心が疲弊していつしか思考から外れていた。同じ頃、よく行くコンビニの店員が近所で彼女を見かけたと教えてくれた。
出張は、俺から距離を置くための、嘘。
彼女のいない生活に慣れ始めて、一ヶ月が経った。
コンビニ弁当の空き箱、ペットボトル、栄養ドリンクの小瓶。夜明けの薄明かりに照らされている部屋は雑多としていて、立ち尽くすことしかできない。やるべきことが目の前に広がっているのに、まるでやる気が起きない。
俺はいつから、この光景を眺めているんだろうか。
まるで、絵を見ているようだ。ただ、悲惨な状態の絵を見ている。絵なら何もできないし、窓から風が入ってこようとも感じることはできない。
こんなはずじゃなかったのに。
二人で思い描く未来は明るく、暮らし始めた頃は確かに輝いていた。
なんでこうなってしまったのか。後悔しても遅い。そんなことはわかっている。
けれど、彼女を幸せにできるくらい強くなれたなら、もう一度、一緒に未来を歩きたい。
幸せな未来の先を、鳥のようにどこまでも遠く飛んで行きたい。
ごめん、本当にごめん。
君が好きなんだ。
最初のコメントを投稿しよう!