4人が本棚に入れています
本棚に追加
第二章・―手紙―
――前略。
初めて貴方に手紙を書くように思います。
貴方が今、この手紙を読んでいるという事は、僕はきっともう、この世にはいないという事ですね。
いえ。きっと、ではなく、絶対にこの世にはいなくなっているでしょう。
先立つ前に、どうしても貴方に言っておきたい事があります。
最初に面会をした際、言われた事に何故だか無性に感情が昂ってしまい、貴方に“大嫌い”だと言った時の表情を、恐らく僕は、永遠に忘れないでしょう。
あの世にも、この感情というものが存在するならば、僕はずっと忘れない筈です。
然して、言ってしまった事なのですが、あれは本当を言うと、嘘なのです。
僕は誰より貴方の事が大好きで、父親としてでなく、一人の人間として、誰より貴方を尊敬していました。
僕が反発してしまったのは、貴方と同じ理由からなのです。
僕は貴方と、息子としてどう接して良いのか理解らなかった。
ただ尊敬していて、どうすれば貴方の前で息子でいられたのか、接し方が理解らなかったのです。
そう、だから友人が貴方の事を馬鹿にした時、本当に頭にきて、手をかけてしまったのです。
僕は取り返しのつかない事をしてしまった。
それでも貴方は僕を見捨てなかった、言葉を一切交わさなくとも、毎日来てくれるだけで嬉しかった。
最初のコメントを投稿しよう!