第二章・―手紙―

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 貴方は知らないでしょうが、僕は毎日看守さんに、貴方の素晴らしいところを自慢していたのですよ。  とても厳格で真っ直ぐな人で、自慢の貴方なのだと、それはもう、看守さんが嫌になるくらいには、何回も話をしておりました。  でもそれなのに、それなのに、一方で僕は、貴方との接し方が理解(わか)らなかった、息子としての接し方が、どうしても……。  だから僕は、最期の賭けに出たのです。  今日僕はやっと長いお務めを終えて、この刑務所の中から世間へと戻れます。  貴方が此処へ来てくれるのも……来てくれる事を望んでいます。  ですが、もしもそれが叶わなければ、僕は今日、此処で自ら命を断とうと思います。  何故そう極端なのか、貴方はそんな風に感じてくれますか?  そうだととても嬉しいのですが……。  理由は貴方と同じです。  出所する日、もし万が一貴方が来なければ、僕は貴方の息子として生きる資格がなかったのだと認識するからです。  貴方と二人、これから生きるのは怖い。  ずっとずっと、貴方の息子として、どう接すれば良いのか、そんな事ばかり考えてしまうでしょう。
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