第二章・―手紙―

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 ですが僕は、同じ理由で一緒に暮らす事実に怖じ気付いた貴方が、このまま僕を見捨ててしまう事の方がもっと怖い。  それはどのような感情よりも恐ろしく、とてもではないけれど、僕のような軟弱者には受け止め切れないでしょう。  だから、自ら命を断つのです。  ですがもしも逢えたら、迎えに来てくれたなら、最後の希望を掴めた貴方と僕には、この手紙は必要なくなります。  そしてきっと、ずっと、ぎこちないながらでも、本当に親子として隣に立ち、生きていける事が出来るでしょう。  ……でも多分、残念ですが、貴方はきっと、否、絶対にこの手紙を読んでいる事でしょうね。  生きている間に一度でも、貴方と親子らしい事をしたかった。  でも出来なかったから、それだけが心残りでなりません。  最期に、それでも僕は、貴方の息子に生まれてきて良かった。  親不孝な息子で、本当に申し訳ありません。  先立つ不幸を、お許し下さい。  少し照れくさいですが、後一言だけ。  ……父さん、今までありがとう、そして永遠にさようなら。  ――早々。
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