灰色の散文

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   自然に反する愛の観念は、過失のために鎖に繋がれ、安心感を与え、飛び立っていく支点にもなっている。  情熱的な接吻と愛撫は、陰気な熱愛の対象であり、何かに没頭している子供っぽさに途方に暮れる。  軽い皮肉の調子が現れ、投げやりな態度で壁に凭れた。  思念を煙幕によって隠そうとするかのように、泥のような物を運んで来ては沈殿させ、曖昧な外観の基礎とも言うべき恥辱に満ちたのであった。  自動ピアノのメロディーが溢れ、闇の中に広がり、筋肉を刺激する程の収縮によって、自分に向かってそそり立つ鋭い鋼鉄の刺を見て、にやりと笑う。  心の懊悩は明るい光の表象によって表現され、愚直そうな様子をして、無邪気な子供になり、不安のあらゆる徴候を持っているのが分かってしまった。  運命の神の親切な配慮によって、黒い憂鬱に捉えられ、自分の力の陰に姿を隠し、美しさに仮面の残酷な外観をあえて付け加える。  最初の臆病な愛撫によって少し和らぐが、自分のしでかしたことの重大さに気づくと、単純な癖は自分の独立性と至上権を主張した。  無意識に、逸楽的に、最後の無邪気さの力を借りて、人生を遡り、軽く口笛を吹いた。
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