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冴えない中年男が目の前に立つ。
黒ぶちの眼鏡、分厚いレンズ、脂ぎった顔、どう見てもメタボな腹、何となく漂ってくる加齢臭、必ず何処かの会社にいる、放置された使えない社員ってやつだよね。
何故リストラに会わないのかは、大いなる疑問でしかないけどね。
はっ、嫁がいなくなった!
娘も行方不明に!
占い師に相談すること?
警察に行きなよ!
悪いことは言わないから!
お金も要らないって!
面倒に巻き込まないでくれる!
目の前から消えてくれる!
だから!
他に行きなって!
使えそうもない中年男は、私の全く価値のない言葉に対して、お金を置いていなくなった。
バカだよね~。
結局、警察に行くしかないのにね。
次に来たお客も中年男。
けど、さっきとは違うな。少しは使えそうな感じ。
嫁の浮気を占ってくれって……。
占い師に相談をすることかな。
お金があるなら探偵事務所に行けば。
そこをなんとかって……。
取り敢えず奥さんの生年月日は?
悪い星の基にあります。邪悪な空気を呼び込もうとしています。貴方の人生は、邪推に満ち溢れた転機を迎えるかもしれません。
だからと言って、浮気をしているとは限りませんよ。
殺してやるって!
落ちつきましょうよ。
人生、悪いことばかりじゃないですから。
まずは確認してみる事です。
どうやってって……。
玄関の入口の飾り物を変えることから始めてみましょう。
関係ないって……。
細かい所から変えて行くことによって、邪悪な空気は浄化されていくのですよ。
そうかなって……。
間違いありませんから!
結局この中年男も、私の全く価値の無い答えに対して、お金を払っていなくなる。
チョロイよね。
何人かのバカなお客と無駄話をしている内に、時間は以外と速く流れて行く。
私のゴミ屑のような話にお金を払ってくれる、アホなお客さんがたくさんいるから、生活には困らない。
辺りは暗くなり、街灯が点灯を始める。
さてと……。
あのクズが待っている私の部屋に帰るかな。
私は荷物をまとめる。
チカチカと点滅をするネオンを見つめながら、自分の部屋を目指す。
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