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✙ それは、突然に ✙
それは急な集中豪雨だった。
「朝、あんなに晴れてたのに・・」
慌てて本屋の前で、雨宿り。
駅からほど近い本屋だが、ショッピングモールは遠い。
傘も買えない。どうしようか、止むかな?
ブレーキ音がして車が前に泊まった。
「乗ってく?」
親しみやすい笑顔の男が言った。
知らない人だ。
私は否定で、首を振った。
「えー、連れないなぁ。この雨じゃ帰れないでしょ。
家まで送るよ、乗りなよ」
この厚意に甘えていい物か。
「だったら俺もこのまま帰らない。困ってる人をほっとけないよ」
##
本当に動く気配がない。夜遅くなり本屋が店をたたんだ。
街明かりが消えてゆく。正直心細い。
まだ雨は止まない。
「分かりました、乗ります!」
半分やけくそで言うと、助手席に引っ張られた。
車が走り出す。
「少し濡れてるよ」とハンカチを出された。
「家、どこ?」
「えと、4丁目のアパートです」
「ああ、あのデカいのね」
くすっと笑って、車はその方向へ向かう。
やはり、タダの良い人なんだ。
「ありがとうございます。」とハンカチを返す。
だが交差点で直進のはずが、脇道に入る。
「あの、道が・・」
「少し、遠回りしようよ」
あちゃ~、やっちゃった。そういう事か。
ホテルに連れ込まれるかも。
でも・・1回きりだし、犬に噛まれたとでも思おう。
よく見ると、イケメンだし。
私は、そんな風に考えてた。
だが車は街を離れていく。街明かりが遠くなる。
「どこへ行くの!」
不安になって聞いた。
「俺の秘密の場所」
森に入った、コテージでもあるのかな?
だが、車は奥深い森の中で止まった。
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