あいつ

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 高校の時、夕方の誰もいない校内の教室で凜が男子に腕を掴まれ嫌がっていたのを見た俺は思わずそばに行き、掴まれた腕を引き離し「嫌がってるからやめろ」と止めて凜を連れ出した。 しばらく凜の手を引いて歩く。  凜が立ち止まった反動で俺は、おっと、と引っ張られる形で止まった。  後ろを振り向くと、凜はうつむきながら小さな声で「ありがとう」と言いながらゆっくりと手を離した。  スローモーションのように離れていく凜の手を瞳で捕らえながら、 「大丈夫か?」 「うん」 しばらくの沈黙がいたたまれず…  俺は思いきって提案してみる。 「あのさ、これから困った事があれば、俺を頼れよ…」 「えっ?」 「前はずっと一緒に居たし俺が守る」 「本当に?前みたいに一緒に居てもいいの?」 凜はそういうと長い睫毛をパチパチさせながら頬をほんのり赤くした。 それからだ…何かあると俺のところに会いにくるようになった。 凜の顔を見るだけで嬉しいくせに わざと素っ気ない態度をとってみせる。 幼馴染み復活? どんな関係でも俺のそばにいてくれるなら幼馴染みだっていいじゃないか。 ただ、俺は自分が言った言葉に未だに後悔し前に進めない自分がいた。
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