交信

2/3
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
「そんなに子供を作るのが好きなら、子供だらけになりませんか?」 「そんなにカエルみたいにな。何百匹も産むわけちゃうねん。一回でだいたい一人。双子の時もあるけど、珍しいわな。双子は」 「一回で一人だとしても、何回も産めば増えるでしょう」 「一人産むのに十月十日かかるねん。1日二人とか無理やねん」 「十月十日ってなんですか?」 「だいたい300日ぐらいやな」 「300日?なんの単位ですか?」 「そっちは1日24時間とかないの?」 「言ってることがわかりません」 「地球はな確か自転と公転というのがあってな、地球1日一回転するのを24時間、地球が太陽の周りを一周するのを365日って決めてるわけよ。たぶん。小学校でそう習った」 「住んでる星が一回転するのを24時間と読んでるんですね。面白いですね」 「面白いって、なにも面白あれへん。そうせんと時間の感覚がわからんくなって、プロ野球中継の時間、見逃してしまうやんけ」 「プロ野球ってそんなに面白いですか?」 「面白いも面白ないもないで。それがないと、人生損してるで、確実に。君に見せたいわ。バース、掛布、岡田バックスクリーン3連発。1985年に日本一になったんや。俺も若かった。髪の毛もフサフサあったし、めっちゃモテた」 「僕にもプロ野球できますか?」 「そら無理やで。君んところは君一人しかおらへんわけやろ。試合やろうと思ったら18人いるねん。それと審判な。それにプロっていうのは生半可なことではなられへんねん。何千人、何万人の野球やってるやつの中から、とびきりうまいやつだけがなれるんや」 「あなたはプロ野球はやってないのですか」 「俺?高校まではやってたで。高校ではレギュラーやった。サード、2番バッター。小技もできる。足もそこそこ、選球眼は良かったで。でもチーム自体はそんなに強くなかったし、甲子園にも出たことがない」 「そんなに上手くなかったということですか」 「プロはな。特別やねん。でも楽しかったで。みんなで部活帰りにな。中華屋よってな。しこたまとり唐揚注文してな。そこの中華屋の鳥唐揚全部根こそぎ食べたるねん。もうわやくちゃや。店主がボヤいとったわ。お前ら来たら、他の客が全部逃げて行くって」
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!