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───
いつ寝たんだろう。
夜中か明け方か。
眠っていたらしい俺は目を覚まし、
しばらくはぼんやりとしていた。
仰向けてた身体を横にして大きく息をつくと、
『わっっ、、、』
同じように身体を横にし、俺を見つめているキリルさんと目が合った。
「あ、、、ああっ」
がばっと跳ね起きた俺は動揺してシーツを引ったくったものの、
『シー、、、』
と唇に指を充てるキリルさんに優しく戻された。
「何もしないよ。
私は汰士を穢すようなことは何もしない」
「、、、、」
そうだ、、、俺は、、、。
───
夕べ、
窓もないこの部屋のドアに鍵を掛けて出て行ったキリルさんが興奮に頬を染めて戻ったのは30分ほどしてからだった。
『やった、やったぞ。
ついに宣言してやった、あの男に、、、』
とかなんとか呟きながら、部屋の中をウロウロした後立ち止まり、俺に視線を留めると、
「、、、お前はまだ穢れているな。
バスルームへ行くんだ」
と命令し、先に立ってバスルームらしき所に入って行った。
真っ白い煉瓦調のタイルで囲まれたバスルームにも当然窓はない。
むき出しの排水管や給水管があちこちに走ってる独特の構造を見て、どうやらここが地下らしいということがわかった。
シャワーの湯を出した後、ドアの所にキリルさんが椅子を置いて座り、中に入った俺に身体を洗うよう指示する。
「頭、顔、身体。
汰士には手の先から足の爪先まで、あの男に着けられたものが染み付いてる。
私がいいと言うまで丁寧に洗いなさい」
俺は目線の前にあるラックから何かしらの液体を手に取ってそっとドアの方を伺った。
椅子に座ったキリルさんは脚を組んで視線を床に落としている。
そう言われれば、、、
裸にしておきながらキリルさんは、常に視線を外し、俺の身体を一切見ないようにしている。
つまり、、、そういう意味で
俺をどうにかする気はないらしい。
指先も白くふやける頃、
ピリリとした痛みを背中に感じてシャワーを止めた。
キリルさんは椅子から立ち上がり手招きする。
「おいで」
「、、、、」
少しビビって躊躇っていると、
「どうしたんだ汰士、一体君は何に怯えているんだ?」
キリルさんは俺の顔だけを見、目を大きく開いて驚く。
俺が怖がる事に心底驚くキリルさん、、、
首輪より、窓のない部屋より、ドアにかけられた鍵よりも、、、
その反応の方が怖かった。
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