Second Case

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「フェルディナントファーマ社日本法人の代表執行たる役員業務に支障をきたすことは、何がありましても厳に謹んで頂きます」 そう言って、まずは立っている水無月さんに視線を据えて、 「水無月さん、あなた方はどうぞ柏木社長と共に任務を遂行して下さい。 しかしながら滞在最終日にはニューヨークでの会議に、その後はスイス本社へ出向けるよう、予定通り、1日たりとも滞ることのないよう終了して頂きたい」 そして結城さんに向かっては、 「あなたが優秀な方かどうかはわかりかねますが、水無月さんが何と言おうと最初の発言に見合っただけの責任は取って頂きます。 警視庁でのエリートキャリアをお持ちならばストーカーへの対応など大した事ではないでしょう」 次に俺を見て、 「柏木社長の抱える業務は今後、増えることはあっても減ることはありません。 保護解除が出るまで結城 (たける)さんが側に付くのであれば、社長に対し、別の意味でお二人が心労を増やすことのないよう、身を慎んで下さい」 「随分偉そうだな。 フェルディナントファーマ社の秘書は自分こそが社長だとでも思ってるのか?」 結城さんはキリルさんのセリフが気に入らなかったようで、本人を横目で睨みながら文句を言った。 けどキリルさんの滑らかな発言は止むことなく、柏木さんに向かっても、 「社長、仮に犯人が特定され、捕まったとしても今後再びストーキングや嫌がらせ、脅しがある度、このように仕事が滞るのであれば、今以上にハードな業務をこなすことになるのはご自身です。 私は我が社のCEOが特殊な仕事を兼務するにあたり、主たる業務の調整を余儀なくされることはやむを得ないと承知致します。 ですがそれが私的事情であることには断固として反対します」 一気に捲し立てるとロボットのように視線を元に戻した。 「だな」 キリルさんの捲し立てに同意した水無月さんは俺を睨み、『最後の詰めをやれ』と合図した。 「、、、っと」 あ、、、そうか ここで俺がバシッと決めれば、、、 『よ、よしっ』 「そ、そうだよ。 キリルさんの言う通りだよ。 こ、こんなことがある度に柏木さんの仕事の邪魔するんじゃ、俺だって気を遣ってス、ス、スストレスだよ」 これくらいでどうだろ。 と思って水無月さんを見ると、黒い眼が 『足りねぇよ』と俺に圧をかけている。 「お、俺、特殊な仕事する柏木さんと付き合うんだから『覚悟はある』ってはっきり言ったじゃないか。 そ、その為にキリルさんにも野々山さんにもお金使ってくれてるんだろ?。 だからもっと周りを頼って、いや、そもそも俺を信じて、、、」 ここまでで満足したのか、それとも諦めたのか、 「決まりだな。 キセ、手に入れた画像と報告書のファイルはフォルダを暗号化して結城に転送しとけ。 それから男が持ち込んだ(ブツ)と封筒一式を回収しろ。 帰りがけ鑑識に回し、帰国してから本格的に捜査する。 それまでは 『護衛に秀でた管理人』と『アタマの良い秘書』、二人の見張りも兼ねた『経験豊富な交渉人』に任せとけばいいだろ。 、、、帰るぞ」 と言って、 「待って下さいっ、待って下さいっ」 バタバタと片付けを始めるキセくんを尻目に、さっさと出ていってしまった。
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