約束の始め

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 初めて会った時の記憶は、今でも鮮明に思い出せる。  その時の私はいつもの様に一人で夜の世界を満喫していた。  無駄な音がなく、視線もなく、完全に私だけの世界になった夜を。  誰にも邪魔されないから、恥ずかしいことをしても問題ない。  そう、例えば年甲斐もなくお姫様みたいにその場でクルクルと回ってみたり、とか。  お花畑を楽しんでいるお姫様のようなことをしていた私に、いきなり誰かが声をかけてきた。  ……それが彼だった。  完全に一人だと思い込んでいた私は彼の声に驚いて、間抜けな声を出してその場で飛び跳ねた。  すると彼も私の声に驚いて、私と同じように間抜けな声を出した。  お互いに間抜けな声を出した私達……しばらく固まっていた。  でも、段々とそれが面白く思えてしまって。  彼も同じ気持ちだったのか、私達は笑いをこらえきれなくなって。  静かな公園で、私達の笑い声が響いた。  それが、始まりだった。
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