第一話 脚本「あの夏」

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第一話 脚本「あの夏」

〇 大きな一級河川・大淀川と田園が広がる都城盆地・都城市市外・高城地区 (夕方) 雨上がり、路面に残る水たまり。夏の夕立の後の空模様が映り込んでる。その中に入り込んでくる不気味な人型ロボット(UDー3ルシファー)と河童のシルエットを思い起こさせるフォルムを持った人型の〝ロボット〟(UGー1 トリトン)の姿。ドーンと言う衝撃音と共に水面に波紋が出来、その後を突風が吹き抜け、水面が荒れ、映し出された像が乱れる。 〇 (UGー1 トリトン) コックピットの中 天羽 侑葵 あまは ゆうき(12歳)が搭乗している。 警告音と衝撃音                               侑葵 「(荒い息で)マジか?」 全面モニターに映し出される不気味な人型ロボット(UDー3ルシファー)。のその眼が赤く光る。その姿を追うように、標準らしきポインタが激しく動きまわっている。        不気味な人型ロボット(UDー3ルシファー)の両手が伸び、河童のシルエットを思い起こさせるフォルムを持った人型の〝ロボット〟(UGー1 トリトン)の背後へと延びる。警告音とともに、コックピットの背後に危険(WARNING)の文字が表示され、点滅する。操縦桿を握りしめ、前に押し出す侑葵。上半身を捻って、パンチを繰り出す河童のシルエットを思い起こさせるフォルムを持った人型の〝ロボット〟(UGー1 トリトン)。不気味な人型ロボット(UDー3ルシファー)の体にそのパンチが直撃し、不気味な人型ロボット(UDー3ルシファー)が吹き飛ばされる。地面に背中から倒れこむ。 侑葵 「当たった。やったー。」 目の前のモニターの中で、立ち上がる不気味な人型ロボット(UDー3ルシファー)。照準器が動き回りながら、不気味な人型ロボット(UDー3ルシファー)の体の中心部に定まる。ピーという警告音とともにモニターに(LOCK ON)の文字が表示される。 河童の声(Qーちゃん) 「ロックオン完了!発射ボタンを!」 侑葵、その声に促されて、握りしめたグリップのトリガーボタンを押す。次の瞬間、モニターが真っ白になると同時に爆音とともに激しい衝撃。侑葵を守る様にエアーバッグが開き、閉じる。 激しい閃光の中で体の一部がバラバラなる不気味な人型ロボット(UDー3ルシファー)。その場に崩れ落ちる様に倒れこむ。土煙が舞い上がる。視界が無くなる。 侑葵「(荒い息で)終わった?」   〇 同 市外 大型店舗駐車場 無線の声A 「目標の沈黙を確認。半径数十キロ以内に脅威の出現は確認されず」 無線の声B 「了解。各部隊は撤収にかかれ。UGー1 トリトンの回収作業が最優先。速やかに行動されたし」 現場に倒れた不気味な人型ロボット(UDー3ルシファー)。その周りを作業者や作業車両が取り囲んでいる。上空を飛び回るヘリや航空機の姿も見える。自衛隊、警察等の車両や関係者が忙しく動き回っている。片膝を立てた状態で座り込む河童のシルエットを思い起こさせるフォルムを持った人型の〝ロボット〟(UGー1 トリトン)。その胸のコクピットが開き、中にいる侑葵の姿が現れる。 新見空尉 「侑葵。大丈夫か?」 河童のシルエットを思い起こさせるフォルムを持った人型の〝ロボット〟(UGー1 トリトン)コックピットに近づき、中を覗き込む新見空尉の問い掛けに、苦笑いしながら、親指を立てて見せる侑葵。近くには停車している自衛隊の対ルシファー専用移動指揮車の姿もある。 〇 対ルシファー専用移動指揮車・車内 近くに停車していた自衛隊の対ルシファー専用移動指揮車の中、数多いモニターを前に、中央の大きいモニターのバックライトに浮かび上がる影(河童・Qーちゃんの背中)が浮かび上がっている。モニターに映し出されている侑葵達と河童のシルエットを思い起こさせるフォルムを持った人型の〝ロボット〟(UGー1 トリトン)の姿を見ている。 〝トリトン〟のコックピットから降りる侑葵。その周りに芳之丞、桜子、亮二、宗太、雷喜が集まってくる。侑葵、芳之丞達に促され歩き出すが、途中、立ち止まり〝トリトン〟の方を振り返り、機体を見上げる。無機質な〝トリトン〟の顔。 侑葵 「あの夏、ゲームではない現実の中で、僕は戦っていた。Qちゃんと出会い〝トリトン〟に乗ったあの日から……」 メインタイトル ~ワールドピースゲーム~ 「HEVEN」 あの夏のヘブン 〇 森の中・三股町 長田地区(夕暮れ) 清流が流れている。その川沿いを水樹 芳之丞 みずき じょうのすけ(12歳)が鼻歌交じりに、釣り竿を持って歩いて来る。手に持つバケツには、釣った魚が泳いでいる。バケツの中を覗き込みながら、満足げに呟く。 芳之丞「大漁、大漁‼。侑葵に自慢しないと。ゲームばっかりしてないで、たまには釣りやろうぜってな。」 その姿を追う視線。暗闇で赤く光っている。その気配に気づく芳之丞。併せる様に暗闇で茂みが動く。その中に浮かび上がる赤く光る二つの小さな光球。芳之丞の頭の中に飛び込んでくる声がある。 河童の声(Qーちゃん) 「僕らは、トモダチ………」 その声に、吃驚する芳之丞。その場にひっくり返る。茂みを分けて、暗闇から出てくる小さい人らしきモノ。周りの景色がその身体に周りの木々が反射して、その体が緑色に見える。芳之丞の頭の中に、河童の姿が思い浮かぶ。 芳之丞「か…かっ…河童だ! うぅあー。出た‼」 恐怖と驚きで思わず叫び、その場から無我夢中で走りだす。その場に投げ出された釣り道具とバケツ。バケツからこぼれ出た魚が水たまりの中で跳ねている。茂みから出てきたモノの手が、魚たちを掴み、バケツに戻す。そして川岸へと向かい、バケツの中の魚を放流する。清流の中を泳ぎ去る魚たち。その姿を立ち尽くし見送っている茂みから出てきたモノ。芳之丞の声が遠ざかって行く。 芳之丞「うぅあー出た出た! 河童だー」 必死に走る芳之丞の姿。転びそうになりながら持ち堪える。 繁みから出てきた者のシルエット。走る芳之丞の姿を目で追った後、川の方を振り返る。その者の立つ近くを流れる川の底が、不気味に発光する。 〇 学校・有水小学校 (朝) 芳之丞の河童目撃記事と写真が掲載されている地方新聞(宮崎日日新聞)の一面を見ている天羽侑葵と水樹 芳之丞、姫野 桜子、門地 亮二、顛祐 宗太、寺岸 雷喜。 芳之丞 「(満面の笑みで)河童を見ました。なので、テレビにでます。」 侑葵 「事がでかくなってる…。」 雷喜 「はい、皆さん、拍手!」 侑葵 「マジ、大丈夫なのかよ!河童って‼」 雷喜 「河童、河童!」 芳之丞 「ほんとだって。こんな真っ赤な目でこっちを見てたんだぜ!」 宗太 「河童。想像上の生物。妖怪、物の怪の一種。一説には宇宙人、グレー説もありますね。」 亮二 「あるいは、溺れた人の水死体の姿が、河童の姿の原型とも言われてるよね…」 雷喜 「ぼく、ドザヱモン」 一同 「ひぇー‼」 桜 「じょぅち、明日テレビ、取材に来るんでしょ? その前にみんなで確認しといた方がいいんじゃない?このままじゃ、嘘つきじゃん。」  芳之丞 「だから、本当に見たんだって!」   宗太 「よし。学校終わったらみんなで確認しに行く?」 侑葵 「めんどくせーよ。イベントあるし」 芳之丞 「ゲームかよ。それよりも一緒に行こうぜ! 河童探し‼。」  雷喜 「河童、河童!」 宗太 「では、放課後に集合って事で。」 桜 「嘘つきか、詐欺師か。芳之丞。」 芳之丞 「どっちもちげーよ!」                     〇 川沿いの堤防・高城町石山 大淀川 (夕方) 橋には萬年橋と書かれている。自転車に跨って堤防に集まっている侑葵、桜、亮二、宗太、雷喜。そこに芳之丞がすごい勢いで自転車に漕ぎながら、遅れてやって来る。 桜 「張本人が遅れてどうすんの?」  芳之丞 「わりー、わりー、さっ、行こうぜ!」 一同 「お前な‼」 〇 森の中 (夕方) 木々により光が遮られて、薄暗い道。その側を大きな川が流れている。自転車を手で押しながら歩いてくる侑葵達。 侑葵 「どの辺りだよ。じょっち。」 芳之丞 「その先だよ。その繁みの辺り。」 芳之丞が指さす先。薄暗い繁みが風で不気味に揺れている。そちらを覗き込む一同。何処かの繁みから、カサカサっと何かが動くような物音。一同、吃驚する。 一同 「なんだよ‼。吃驚させるなよ。」 わぁわぁ騒いでいる一同をよそに、皆と別な一点を見つめている亮二。その方向を指さしながら、 亮二 「あれ、何?」 一同、亮二の指さした方向を見る。茂みの暗闇に赤く光る二つの赤い光点。固まる一同。ゆっくりと繁みの中からシルエットが浮き出て来る。 芳之丞 「鬼太郎?」 雷喜 「どざえもん?」 暗闇に立つ小さい人影らしきモノ。姿を現す。灰色の身体の小さい生物。赤い目らしい部分を見開き、侑葵達を見ている。手を差し伸べる。と同時に侑葵達の頭の中に飛び込んでくる声。 河童の声(Qーちゃん)  「僕らは、トモダチ………」 芳之丞 「あの声だ……」 お互い顔を見合わせて、自転車のハンドルを握りしめる一同。自転車に飛び乗り、一目散に走りだす。 一同 「出た! 河童だ‼」 走り去る侑葵達。その様子を見つめている河童。遠ざかって行く侑葵達の声。気が付けば、辺りは暗くなり、空には星が瞬き初めている。空には夏の大三角形。 〇 天羽家 (夜) 天羽家、茶の間。天羽英樹(侑葵の父親)と天羽まゆみ(侑葵の母親)に、河童を見たと大騒ぎしている侑葵達。 侑葵 「だから、河童が居たんだって。」 芳之丞 「そうなんだよ。おじさん!」 英樹 「そう。それは珍しい者を見たな。おじさんも見てみたかったな」 桜 「あれは、絶対河童だよ! あんな生き物みたことないもの。」 まゆみ 「そんなことより、あなたたち、今何時だと思ってるの? さっさとお家に帰りなさい。お父さん、お母さんが心配してるわよ!」 英樹 「みんなの家から電話あったぞ。かなり怒ってたな。」 子供達、時計(19:30を過ぎてる)を見て、 子供達 「やべぇー」「うそー!」「マジか!」 慌てて部屋から出ていく。 〇天羽家、玄関先 子供達「お邪魔しました。」「また明日な」「後で連絡する」それぞれが言いながら、自転車に跨り家路へとつく。「じゃぁね。」「バイバイ」「気をつけてな」遠ざかって行く子供達の声。 〇天羽家 (夜) リビングでスマフォを見ている侑葵。スマフォのラインの画面。母、まゆみの名前で、グループラインをしている。悩んでるスタンプに続いて、 水樹 由衣(スマフォ) 「明日のテレビ収録、どうする?」 (芳之丞の顔が浮かぶ。合わせて声) 姫野 花菜(スマフォ) 「何か怖くなってきた」 (桜の顔が浮かぶ。合わせて声) 門地 幸子(スマフォ) 「あれ、本物だよね?」 (亮二の顔が浮かぶ。合わせて声) 高山 まゆみ(スマフォ) 「まじすぎ?都市伝説だっけ?」 (侑葵の顔が浮かぶ。合わせて声) 水樹 由衣(スマフォ) 「Mr・都市伝説来る!」 (芳之丞の顔が浮かぶ。合わせて声) 門地 幸子(スマフォ) 「関、来んの?」 (亮二の顔が浮かぶ。合わせて声) 顛祐 結子(スマフォ) 「とりあえず、結果として河童の存在は確認出来たことだし、明日は、流れにまかせよう。」 (宗太の顔が浮かぶ。合わせて声) 寺岸 歩美(スマフォ)「んだ。」 (雷喜の顔が浮かぶ。合わせて声) 門地 幸子(スマフォ) 「明日、河童が出て来るかはわからないよね?」 (亮二の顔が浮かぶ。合わせて声) 顛祐 結子(スマフォ) 「大丈夫。その時は、この番組の終わりに驚くべき情報が飛び込んできたって流れになるよ」 (宗太の顔が浮かぶ。合わせて声) 水樹 由衣(スマフォ) 「それ、違う番組。矢追純一の番組じゃねぇ?」 (芳之丞の顔が浮かぶ。合わせて声) 寺岸 歩美(スマフォ) 「んだ。」 (雷喜の顔が浮かぶ。合わせて声) 高山 まゆみ(スマフォ) 「とにかく明日は、なる様になるさ。俺たちも行くから、心配すんな。お前の晴れ舞台だ。事件を起こさない限り、テレビなんて出れないぞ。」 (侑葵の顔が浮かぶ。合わせて声) 水樹 由衣(スマフォ) 「全国放送だって言ってた。何か、緊張してきた!」 (芳之丞の顔が浮かぶ。合わせて声) 門地 幸子(スマフォ) 「テキトーに頑張れや」 (亮二の顔が浮かぶ。合わせて声) 寺岸 歩美(スマフォ) 「んだ。」 (雷喜の顔が浮かぶ。合わせて声)   顛祐 結子(スマフォ) 「こちらでは遅れての放送です。誰も気にかけてはいないでしょう?」 (宗太の顔が浮かぶ。合わせて声) 姫野 花菜(スマフォ) 「きっと、嘘つき小学生として有名になれるわ。信じたくない。信じられない貴方だから。(爆笑)」(桜の顔が浮かぶ。合わせて声) 〇 水樹家 (夜)  芳之丞の部屋。スマートフォンを睨みながら 芳之丞 「あいつら、他人事だと思って」 スマートフォンに書き込む。 〇 天羽家 スマートフォンを覗き込む侑葵。画面に返信内容が表示される。 水樹 由衣 (スマフォ)「Mr地方伝説に俺はなるんや」(芳之丞の顔が浮かぶ。合わせて声)。 続けて関暁夫のスタンプ。「でしょ‼」 頭を抱える一同 「はぁ~?」 〇 森の中・三股町 長田地区(夕暮れ)芳之丞が河童を見た場所の近く。数人のテレビクルーと侑葵達が居る。忙しいそうに声を張り上げながら、動き回るテレビクルー達。 テレビクルーの一人 「今日の撮影はこれまでです。撤収します! 」              大きくため息をつく芳之丞。 芳之丞 「Mr地方伝説に俺はなれんかった……」 侑葵 「そうがっかりすんな。ある意味、本番で河童出なくて良かったよ。きっと騒ぎになって、今頃大変な事になってたぞ」 桜 「すごい噛んでたけど、そんなあなたも素敵です。ぼ、ぼ、ぼくがみ、みたのは……」 宗太 「その存在を確認出来ない事こそ、伝説になるのです。その事がある意味真実味を持たせるのです。ホントかなって。番組的にはオッケーです」 亮二 「でも、僕たちは真実を知ってる」 呟く亮二の言葉に、一瞬その場の時が止まる。互いに見つめ合って、頷く。 亮二 「じょっちが世間の皆さんの間ではオオカミ少年と言われようとも、僕たちはMr地方伝説を信じてる」。 桜 「味方だよ」 芳之丞 「オイ!」 テレビクルーの一人「それでは皆さん、お疲れ様でした。」 侑葵達一同「(とびっきりの笑みでクルーの方を振り返り)お疲れ様でした‼」 その会話に重なる様にゴォーと言う地響き。巨大な金属物が地面に着地するような音(ロボットアニメ等で良く聞く効果音)ガシャーン!さらに被さる様に電話の受信のコール音。                                        〇 都城市消防局・都城市消防局指令課・都城市内(昼)  受信のコールがなる(前カットからのもの)。 消防局員A「はい。こちら消防。救急ですか?消防ですか?」 電話の声 (女性)「地、地震です。すごい揺れで(背後では地響きが聞こえている)、中に人が。助けて!」 〇 都城市 市外  電話を掛けている主。建物の屋外。木々が揺れて家が軋んでいる。突風。恐怖にたちすくす電話の主。その上に覆いかぶさる様に巨大な影(UDー1 ルシファー)が被さる。 電話主 「な、なに? ロ、ロボット? う、キャー(通話、途切れる)」 消防局員A 「ロボット?もしもし大丈夫ですか? 切れた……」 となりの隊員を見る。と立て続けに受信のコールが鳴り始める。他の隊員も受信対応する。 消防局員B・C・D 「こちら消防。地震ですか?ロボット?」 消防隊員の監視する情報モニターには、地震を示す様な異常を示していない。 消防局員A 「地震って?どこで?」 〇 川沿いの堤防・高城町石山 大淀川 (夕方)                  大きな通りにぶつかる川沿いの道。侑葵達が歩いて来る。 目の前をすごいスピードでサイレンをけたたましく鳴らしながら、緊急車両が通り過ぎてゆく。 芳之丞 「どうした? 」 侑葵達、走り出し、大きな道端で、緊急車両が走り去った方向を見る。市内の方向。その目線の先で大きく上がる黒煙。かすかに炎も上がっている。その中で、巨大な人影(UDー1 ルシファー)みたいなモノが動いてる。遠くからサイレンや喧騒に混ざって聞こえる機械音。                                      侑葵「なんだ?あれ?」 〇 都城市内・霧島酒造 (夕方) 巨大な貯蔵タンクを破壊しながら、飛散する液体で霞んだ中を突き進んで来る巨大な影(UDー1 ルシファー)。逃げ惑う人々の姿。 〇 川沿いの堤防・高城町石山 大淀川 (夕方)  停車していた周りの大人達のスマフォの緊急警報警告音が一斉に鳴りだす。メールを確認しながら、 大人A 「何かが街を破壊してるってよ」 大人B 「身の安全を確保しろってよ。」 大人C 「とにかく、あそこから少しでも遠くに離れなくちゃ」 宗太 「何か事件が起こってるみたいですね。」 亮二 「なんか不味い感じ」 桜 「とにかく、家へ…」 その時、先程、侑葵達と一緒だったテレビクルー達が、市内に向かって車で通りかかる。車の窓を開けて侑葵達に何かを叫んでいる。スローモーションの動き。ゆっくりと走り過ぎようとするクルーを乗せた車。周りの景色も侑葵達の動きもスローモーション。すべての音が消える。 テレビクルーの一人 「(かすかに)危ないから、お家へ帰り……!」 その声に被さる様に大きな声。侑葵の脳裏に浮かぶ昨日見た河童の姿。 河童の声(Qーちゃん) 「あの場所へ、僕の居るあの場所へ来て。そうすれば皆を助けられる。」 侑葵だけに届く声。河童の姿、脳裏から消える。走り去るクルーを乗せた車。音が戻ってくる。騒いでる芳之丞達。 侑葵 「聞こえた……昨日の河童の声。」 芳之丞 「何? どうした? 侑葵?」 侑葵 「河童が……行かなきゃ」 踵を返して、走り出す侑葵。 芳之丞「どうしたんだ? あいつ」 木々の木漏れ日がこぼれる川岸の歩道を走る侑葵。息が上がる 侑葵「はぁ、はぁ」 〇 都城盆地を見渡せる上空 宮崎県警ヘリ「ひむか」と防災救急ヘリコプター「あおぞら」が近距離で並んで都城市内へと飛行している。 〇 宮崎県警ヘリ「ひむか」コックピット 機長「只今、現場を目視確認した。都城市市街地中心部付近にて、巨大な人型の〝ロボット〟を確認。その〝ロボット〟が破壊活動を行っている模様。その近辺から炎と黒煙が立ち上っている。現状から確認する限り、これは通常の災害に非ず。繰り返す。通常の災害にあらず。異常事態発生!」 〇 都城盆地・都北町付近 (夕刻) 巨大な工場(住友ゴム工業株式会社 宮崎工場)に向かいつつある巨大な人影(UDー1 ルシファー)。巨大な煙突をへし折る。逃げ惑う人々。 〇 陸上自衛隊 都城駐屯地 (夕刻)                         戦闘ヘリコプター、コブラ(AHー1S)、アパッチ(AHー64D)の回転欲が回り始めている。 航空課整備士 「(口元のマイクフォンを握りながら)こちらは準備OKです。いつでも行けます!」 〇 都城市内・ITビル・屋上 黒装束に大きな黒い羽をたたんで、エリーニュス(天狗)が一人、破壊されてゆく街を無表情に見下ろしている。 〇 (回想・過去) 空が真っ赤に燃えている。地表が真っ赤に燃えている。夜のはずなのに、地表を真っ赤に燃え尽くす炎が、空を真っ赤に染めている。 山の頂付近に立ち、その光景を見下ろしているエリーニュス。体中に傷を負っている。左目を負傷し、赤い血が涙のようにその目から流れ出している。フラッシュバックする様に、巨大な大きな人影が、炎を中から出現する。女・子供の泣き声や叫び声がその姿に重なる。 エリーニュス(天狗)、その手を空中へ伸ばし何かを掴もうとする。その指先が震えている。 天狗族と思われる女の声 「あなた、助けてー」  子供の声 「お父さん、怖いよ」 次の瞬間、爆音と天狗族と思われる女の声と子供の叫び声 天狗族と思われる女の声 「キャー」 子供の声 「うわー」 ゴォーと炎の燃える様な音。 エリーニュス(天狗) 「ウォー(怒りと悲しもの咆哮を上げる)」 その場に膝から崩れ落ちる。 エリーニュス(天狗) 「お前たちは、決して触れてはいけないものに手を出してしまった。」 河童(Qーちゃん)に良く似た河童のイメージが浮かぶ。伏せていた顔を上げ、こっちをしっかりと見つめ返している。 河童(Qーちゃん)に良く似た河童 「私たちは彼らに恩義がある。非力なかれらを守るのが私たちの使命だ。」 エリーニュス(天狗)  「その答えが、〝未知なる力・オリハルコン〟か?」 河童(Qーちゃん)に良く似た河童のイメージ、エリーニュスの問いには答えず姿が消える。 エリーニュス(天狗) 「どうなるかわかってるのか!」 河童(Qーちゃん)に良く似た河童の声 「その答えは、彼らが出すだろう……」 赤に染まった絶望の世界で、一人、立ちつくすエリーニュス。 (回想終わり) ゆっくり閉じた両目を開く。左目は傷があり、少ししか開かない。 そこへ、突如もう一人、天狗が姿を現す。 天狗A「エリーニュス様。奴らが動きだしました。先程〝オリハルコン〟を感知しました。」 エリーニュス(天狗) 「わかってる。(アイマスクを付ける)この体でもピリピリ感じる。徐々に〝未知なる力、オリハルコン〟が大きくなっているのを。」 前を向き、燃え盛る市内を見下ろしながら、 エリーニュス(天狗) 「河童どもめ。またしても我々に盾突くか。」 エリーニュス、空へ手を突き出す。拳を握りしめる。 エリーニュス(天狗) 「この世界が今、誰の手の中にあるか思い知らせてやる。」 エリーニュス(天狗) 「人間共よ。思い知るがよい。〝未知なる脅威〟を。この先、いくらでも〝絶望〟を見せてやる。」 唸りを上げて、街を破壊する巨大な人影(UDー1 ルシファー)。また一つ火の手が上がる。 背中の黒羽が伸びて、エリーニュスの身体を包み込むと同時に姿が消える。続く様に、もう一人の天狗の姿も同じように消える。その場に黒い羽が一枚、屋上にゆっくりと落ちて取り残される。爆音とともに吹いてきた風に舞い上がる。 〇 森の中・三股町 長田地区 (夕方) 大きな川の川岸に息を切らせ立つ侑葵。辛そうに息を切らして、前かがみで川の方向を見つめる。 侑葵 「はぁ、はぁ」 水面に映る入道雲と夏特有の夏空。そして不気味に立ち上る数本の黒煙。ふたたび侑葵の脳裏に飛び込んでくる河童の声。 河童の声(Qーちゃん) 「よく来ました。あなた方に〝力〟を預けます。」 水面に静かな波紋。その中からゆっくりと昨日見た灰色の身体の小さい生物が現れる。やさしい眼差しでこちらを見ている、 息を切らして、芳之丞、桜、、亮二、宗太、雷喜が後を追って駆けてくる。 川岸で、水面に浮かぶ灰色の身体の小さい生物・河童・Qーちゃんと川岸に立っている侑葵。その姿を目で追いながら、近づいて行く。 芳之丞 「どうなってるんだ? いったい?」  川の中心の水面から川岸に向かって波紋が広がる。小さい波紋が徐々に大きくなり大きな渦となる。辺り一面水しぶきが待っている。太陽光に合わせて、大きな虹がかかる。ゴォーという轟音と機械音ともに大きな渦の中から河童のシルエットを思い起こさせるフォルムを持った人型の〝ロボット〟(UGー1 トリトン)が姿を現す。虹の中をゆっくり立ち上がる。その姿を目を見開いて見上げる侑葵。 侑葵 「………!」 河童の声 「それに乗れば、みんなを救える」 河童のシルエットを思い起こさせるフォルムを持った人型の〝ロボット〟(UGー1 トリトン)が、侑葵の前に右掌を差し伸べながら、片膝を着く。人型の〝ロボット〟の胸元が大きく開いて、コックピットらしきものが現れる。侑葵の眼、催眠にかかったかのように無表情。一瞬、その眼が青く輝く。小さく頷き、コックピットの中へと乗り込み、シートに座る。催眠から解けたように、表情が戻る侑葵。コックピットが閉じ、外の世界が自分の周り全体に映し出される。河童のシルエットを思い起こさせるフォルムを持った人型の〝ロボット〟(UGー1 トリトン)立ち上がる。〝トリトン〟モニターの下の方に、足元の近くまで辿り着いた芳之丞たちが何か叫んでる姿。立ち上がるにしたがって、視界が高くなり、その姿が小さくなる。 〇 (UGー1 トリトン) コックピットの中 侑葵 「おおー」 芳之丞「侑葵!」 他のメンバーも口々に(UGー1 トリトン)の中の侑葵に向かって叫んでいる。 侑葵「スゴイ。これっていったい……???」 河童の声(Qーちゃん) 「あれが、あなた方が戦う相手です。」 モニター前方、黒煙に包まれた市街地で破壊を繰り返している巨大な人影(UDー1 ルシファー)へズームインする。 侑葵 「戦うったって、そんな事出来ないよ」 河童の声(Qーちゃん) 「大丈夫。私がフォローします。私たちはトモダチ。」 両腕の前へ、丸い操縦桿らしきものがせり出してくる。不安な表情の侑葵。 河童の声(Qーちゃん) 「私が、あなたたちを守ります」 侑葵の鼓動が高まる。 侑葵「(大きく肩で息をつく。) 落ち着け。」 〇 都城市市街地上空 (夕刻) 飛来する自衛隊の戦闘ヘリ部隊。巨大な人影と対峙するようにホバーリングしている。その上を航空自衛隊のFー15戦闘機・二機がかすめて飛んで行く。 〇 戦闘ヘリコプター、コブラ(AHー1S)コックピット パイロット 「発砲許可を願う。」 臨戦態勢の戦闘ヘリコプター。音を立てて、機銃が動く。 次の瞬間巨大な人影(UDー1 ルシファー)の指先から強烈な光・レーザー光線が発射される。戦闘ヘリ部隊の数機と一機のFー15戦闘機の機体を切り裂く。炎を上げ墜落していくヘリ部隊と戦闘機の光。レーザー光線を掻い潜って上昇するもう一機のFー15戦闘機。眼下にその姿を睨むように見上げる巨大な人影(UDー1 ルシファー)。 〇 Fー15戦闘機・コックピット 操縦席には航空自衛隊 空曹長 新見 誠 にいみ まこと(35歳)の姿。 眼下を振り返りながら、 新見 「なんだ?あの化け物は?」 上昇し、現場付近上空を大きく旋回する新見の搭乗するFー15戦闘機 〇 (UGー1 トリトン) コックピットの中 市街地に火の手が上がる。その様子をモニター越しに見ている侑葵 侑葵 「僕たちの街が……。」 河童の声(Qーちゃん) 「あなたの〝力〟なら、みんなを救えます。自分の持つ〝力〟を信じなさい」 コックピット内のモニターに様々なウィンドウ画面が開き、プログラムが画面に流れると閉じる。小さい動力音が徐々に大きくなっていく。 侑葵 「(意を決する) やれるか?」 両手を伸ばし、球体の丸い操縦桿を握りしめる。 河童の声(Qーちゃん) 「大丈夫。僕らはトモダチ」 〇 森の中・三股町 長田地区 (夕刻)  河童のシルエットを思い起こさせるフォルムを持った人型の〝ロボット〟(UGー1 トリトン)が完全に立ち上がり、飛翔する。川の水が舞い上げられ、芳之丞たちの上に降り注ぐ。虹の中でびしょびしょになる一同 芳之丞 「何がどうなった?」 宗太 「まったくわかりません」 亮二 「侑葵君が…」 桜 「行っちゃった」 巨大な人影(UDー1 ルシファー)へと上空を飛翔する侑葵を乗せた河童のシルエットを思い起こさせるフォルムを持った人型の〝ロボット〟(UGー1 トリトン)。目の前には、今まで見たこともない空を飛ぶ光景。雲を切り裂き、眼下に広がる夕日に照らされた都城盆地・市街地。その中で破壊行動をしている巨大な人影(UDー1 ルシファー)。 〇 (UGー1 トリトン) コックピットの中 照準器らしきものが、コックピット内を動きまわっている。 侑葵の指先にある装置はは、ゲームのコントローラに似た物。照準器の動きに合わせてボタンも同じ方向で点滅している。それに合わせて指先を動かす。 侑葵 「すごいな。やれそうだ」 〇 都城市市街地上空 上空から降下してくる河童のシルエットを思い起こさせるフォルムを持った人型の〝ロボット〟(UGー1 トリトン)に気付く巨大な人影(UDー1 ルシファー)。見上げた目に赤い閃光が走る。 〇 (UGー1 トリトン) コックピットの中 モニターに近づく巨大な人影(UDー1 ルシファー)。照準器が捉える。高まる機械音 「ウィーン」。 巨大な人影(UDー1 ルシファー)の前に着地し、身構える。襲い掛かる巨大な人影(UDー1 ルシファー)。モニター全面一杯にその顔が近づいて来る。 侑葵「うぉー!」 侑葵の眼が、青色に輝く。それに呼応する様に、(UGー1 トリトン)と眼が青白く発光する。 First episode Auto save completed To the next story                            第一話 終わり
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