冬の訪れ

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 少女は自分の口に手を当てていた。なんとか大声を出すのは我慢してくれたようだ。とても嬉しいんだが、その汚いものを見るような目をやめてほしい。 「ごめんなさい、少し気が動転していたわ」  見かけよりしっかりしているな。ひょっとしたら同い年くらいなのかもしれない。 「そうよね……あなたくらいの男子なら性的な表現を含んだものを買っていてもおかしくないわよね」  わかってくれたようでとても嬉しいよ。俺は乾いた笑いを浮かべながら彼女の目を見た。 「二次元の方が社会的に風当たりは厳しいけどね」  青少年健全育成法案は何をしているのだか。店の方も年齢確認くらいちゃんとしなさいよね、彼女は小さな声でそう言った。 「まあ、なんだ……ぶつかってしまったお詫びにコーヒーくらい奢るぜ?」  少女はすごく遠慮したそうな顔をしていたが、ここで断る方が無粋であると判断したようだ。新手のナンパかと疑われたのかと思ったが、雰囲気で俺が生身の女性に興味がないことを感じ取ったのかもしれない。 「それで……私はこの街に引っ越してきたばかりでよくわからないのだけれど……まさかそこのハンバーガーショップの100円のコーヒーじゃないでしょうね?」  ヒクヒクと自分の頬が引き攣るのがわかった。図星を見抜かれないために虚勢を張ってみる。 「ふふふ……実は行きつけの店があるのだよ」 「へー……それは楽しみね」  冷めた表情で彼女は言った。実際に喫茶店は知っている。とても評判もいいところだ。学生にはあまり知られていないが、知る人ぞ知る名店と言えるだろう。だが、そこではコーヒーは不味い。紅茶が舌つづみを打つほど美味いのだ。 「まあ行ってみればわかるか。ついでに少し街の案内でもしてやるよ」  そう言って俺は彼女の前を歩き出した。少し後を彼女は付いてくる。妹がいたらこんな感じなのかな……なんてセンチメンタルなことを少しだけ思ったりする。
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