おそるべし、は天然か

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 そして、合コン当日。  沙織ちゃんは、私と菜緒ちゃん以外にも二人の女の子を呼んでいた。私は、その二人とは初対面で、菜緒ちゃんは急遽、仕事で来られなくなってしまった。  男五人、女五人での合コン。相手側は二十代後半~三十代前半までの会社員で、奢ってくれるということだった。    そんな響きに、彼氏がいなかったらしい初対面の二人、由衣ちゃんと瑞穂ちゃん(もちろん、どちらも仮名)は、少し期待をしているようだったが、そりゃそうだろう。  私は、一応彼氏がいる。  そして、実は沙織ちゃんも彼氏はいる。  けれど、沙織ちゃんは、合コンは別に浮気ではないとの考えなので、気にしていないようだった。たしかに浮気とは言えないが、後ろめたいものはあったので、私は一応、全部彼氏に話しておいた。  待ち合わせ前にカフェに入り、女四人で自己紹介と、世間話を少ししてから、お化粧直し。  そして、小春日和の人から沙織ちゃんの携帯に電話がきて、女の子が一人来られなくなったということの旨を伝える。  そして、もう店に着いたとのことで店の名前を聞き、女四人でその個室居酒屋へと向かった。  いくつかの居酒屋、カフェなどが入っているビルの最上階。そこのチェーンの焼き鳥屋に「佐々木」(仮名)で予約を入れたとのことだった。  ドキドキとしながら、エレベーターに乗り込む。  チーンとの音の後に、エレベーターの扉が開いた。  エレベーターを降りると、すぐに店の入り口があった。 「いらっしゃいませ!」  と、インカムをつけた店員さんに笑顔で出迎えられ、 「佐々木で予約してると思うんですけど……。」  と、沙織ちゃんが言うと、店員さんがパソコンの画面をチェックした。 「佐々木様ですね。ご案内します。」  と、言われると案内の係の店員さんがやってきた。  こちらです、との言葉に、女四人ぞろぞろと店員さんについていく。沙織ちゃんを先頭にして部屋の前に着くと、店員さんが、部屋の中に向かって声を掛けた。 「お連れ様です。」  どうぞー、と、野太い声が中から響き、店員さんが少しだけ襖を開けた。  そして、その部屋の中を見た沙織ちゃんは、すっ、と襖を閉めてしまった。 「帰ろうっ!!」  と、私達の方をくるりと向いたかと思うと、沙織ちゃんはそう言った。  その言葉に私達三人は驚いた。  一体、沙織ちゃんは部屋の中で何を見たというのだろうか、と、戸惑う私達。  もっと困ったように、え、え、といった顔をしているのは店員さんである。  その店員さんに、ここで間違いないので、どうぞ仕事に戻ってくださいと伝えると、不思議そうな顔をしながらも、この場から離れていった。 「だめだめ! 帰ろう、みんな。もう、うちらでご飯行こっ!」  と、焦ったように、早口でまくしたてるように言った沙織ちゃん。 「え、どうしたの? 何があったの??」  と、沙織ちゃんから事情を聞こうとしていたその時、沙織ちゃんの前の襖がすっと開いた。  「岡田さん(沙織ちゃんの苗字・仮名しかも偽名)どうかなさいましたか?」  と、部屋から顔を出してきたのは、すっと背の高い、黒髪よりも白髪の範囲が広い髪の毛の、おじ様。  見た目からして、五十代後半に満たないぐらいだろう、おじ様であった。 「あ、えと、その……。」  と、言葉に詰まる沙織ちゃん。 「さあさあ、中に入って。」  と、促され、渋々と言った風に沙織ちゃんが部屋の中に入ったので、私達三人もそれに続いて部屋に入った。  すると、予想外な光景が、目の前に広がっていたのだ。
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