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部屋の中にいたのは、八人の男性。
その八人中、七人がどう見ても二十代には到底見えない、おじ様ばかりだったのだ。
唯一若そうな男性は、それでも三十代後半か、四十代ぐらい。
そもそも五対五じゃなかったのか?
と、事前情報とあまりにも違うその光景に、私たちは、沙織ちゃんが帰ろうと言った意味を知る。
「さあさ、女の子たち、間に挟まる様にして座ってね。」
との佐々木さんの声に対し、
「嫌だ……。」
という女の子達全員の心の声が、私には、しっかりと聞こえた。
しゅんと静かになってしまった女の子三人。
その中で、私がしっかりしなきゃ! と、謎の使命感にかられた私は、佐々木さんに話をつけた。
「慣れるまで、女の子で固まらせてください。」
と。
すると、おじ様たちから、ノリ悪いぞー、なんて言葉が飛んできた。
が、その言葉を、皆人見知りで、という言葉で凌ぎ、テーブルの端に四人で固まり、席についた。
「じゃあ、十分だけね。」
と、ものすごく見下ろす感じで、そう言った私の向かいに座っていたおじ様は、私の隣の沙織ちゃんを、ずっと見ていた。
可愛い子も大変だと、心から私はそう思った。
そして言葉通り、十分ぐらいしか許してくれなかった佐々木さんは、すぐに席がえを言い出した。
おじ様たちの間に座らされた女三人は、借りてきた猫の様になった。
一人お酒が飲めない子もいたが、無理やり酒を注文し、食べ物も追加注文などしてくれず。
なので食べる物がない。
となると飲めない子はもっと大変だ。
本気で、することがないのだから。
そんな中、女の子三人はじっと座って、ただ、おじ様たちの話を聞いていた。
私は私で、この集まりの中にも、なんとなく上下関係があるらしいということに気が付いていた。
私が座らされたのは、おそらく立場が下なのだろうおじ様方の間。他の子らは偉そうなおじ様たちの間、間に、座らされていた。
私の左隣には『D&G』と、でかでかとかかれたサングラスをかけ(室内なのに)、ピンクのシャツ(なで肩)、左手に扇子を持ったおじ様。
その向かいには、唯一若そうな男性。
私の向かいには、白髪百パーセント、グレイのポロシャツに、眼鏡を頭にかけているおじ様がいたが、その首には『報道関係 鈴木(仮名)』と書かれた、ネームプレートがかかっている。
そのおじ様の隣は佐々木さんで、私の右隣には、あの、大御所有名人並みの、ねじられたスカーフを首に巻くおじ様がいたが、やはり扇子で自分を扇いでいた。
そして私は、このよくわからない状況に、だんだんと面白くなってきていたので、観察をしてみることにしたのだ。
お酒を飲みながら話を聞いていくうちに、この集まりが社長の集まりなのだということが分かった。どんな社長かはわからないけれど、八人中七人が社長らしい。
唯一社長じゃないのは、若い男性で、今日は運転手として付き合わされているということだった。
ん? 運転手ということは……と、その若い男の人のグラスを見る。
すると、その若い男性のグラスには茶色い液体が入っている。尋ねると、ウーロン茶を飲んでいると言っていた。
若い男性から一番離れた席で、沙織ちゃんにベラベラと話をしている社長さんは、顔が真っ赤。その社長さんを、飲み会が終わった後、三時間かけて自宅まで送り届けるということだ。
しかもそのあと、彼は会社に戻り、仕事をするのだという。
「……残業代とか、手当とか、でるんですか?」
と、私が尋ねると、彼は笑った。
「出ませんよ。」
と、言って。
「……大変ですね。」
そんな彼に、私は、そう言ってあげることしか出来なかった。
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