おそるべし、は天然か

7/8
前へ
/8ページ
次へ
 エレベーターを降り、由衣ちゃんと瑞穂ちゃんは、そのまま帰った。  私と沙織ちゃんは、口直しに、ちょっとお茶して帰ろうと、カフェに入った。  冷たいカフェラテにガムシロップを入れ、ストローで混ぜながらの、女子トーク開始。 「……ほんと、ごめんね。まさかこんなことになるなんて。」  と、沙織ちゃんは、何度も何度も謝ってきた。 「ある意味楽しかったし、気にしないで。社会勉強、社会勉強。」  と、沙織ちゃんを励ましながらも、私にはずっと気になっていたことがあった。 「あの、メールの人が佐々木さんなんだよね?」  と、その、気になっていたことを、沙織ちゃんに尋ねた。 「うん、そうそう。もう、メール送らないわ。これじゃ、詐欺じゃん。」  むぅっ、とした表情になった沙織ちゃんが言う。 「二十六って言ってなかった? 沙織ちゃん、それ信じたの?」  と、私は聞いた。  失礼だが……どう見ても、佐々木さんが二十六には見えなかったからだ。連絡先とコーヒー無料券を渡されたとき、沙織ちゃんは佐々木さんの姿を見ているはずなのにと、私はずっと、ずっと、気になっていた。  すると沙織ちゃんは、うーん、と少し考えてこう言った。 「ほら、老けてる人っているでしょ? 佐々木さんもそうなのかなぁって。」 「……そう、だね。」  私はその答えを聞いた時、本当におかしくてしょうがなかった。  これが、天然というものか。  一生、かなうことがなさそうだと思った私は、混ざりきっていない甘いカフェラテを、ずずっと一気に吸い込んだ。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加