5 課長の未練

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5 課長の未練

 今度は一体いつ課長に会えるんだろう。  課長に会った次の日は一日中、そんなことを考えながら仕事をしていた。おかげで作業効率が下がり、残業をする羽目になった。    最近は残業をしないように言われているので、定時を過ぎるとオフィスは私だけになった。      パソコンでデータを入力していると人の気配がして画面から顔を上げた。      すぐ側に男性の顔があった。      びっくりした拍子に男性を突き飛ばした。 「イタタタ……って、痛くないや」    課長の声がして二度びっくり。 「濱田課長!」    課長は尻餅をついていた。 「課長、すみません。大丈夫ですか?」      課長の側に行き、手を差し出した。    課長が私の手を掴み、ふわりと立ち上がる。 「ああ、大丈夫だ。幽霊だから痛みは感じないみたいだ」 「すみません。そんなに力を入れたつもりはなかったんですが」 「体も軽いみたいだから仕方ないよ。島本くんは手痛くない?」 「何ともないです」 「幽霊で良かった」   「やだ。変な事言わないで下さいよ」  課長の一言が妙におかしくて、笑いが零れた。 「島本さん、まだいたんですか?」    突然、オフィスのドアが開いて、江里菜が入って来た。    慌てて課長から離れ、自分の席に座りパソコンに向かった。 「仕事が終わらなくて」 「今、誰かと話してませんでしたか?」    江里菜は向かい側の自分の席に行きながら言った。
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