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「いえ、あの、課長が思い出した仕事って何かなと思って。昨日言ってましたよね」
「その事か」
課長が憂鬱そうにため息をつき、腕を組む。
「実はね、亡くなってから四十九日までに未練を無くさないとあっちの世界に行けないらしいんだ。僕は死んだ時未練があったからこっちに戻されたんだ」
「四十九日って、あと一週間じゃないですか。期限が過ぎたらどうなるんですか?」
「成仏できずに永遠に浮遊霊としてこの世をさまようようだ」
「えーっ、それってマズイ事ですよね」
「かなりね」
「何、悠長にお酒なんて飲んでるんですか! 早く課長の未練を無くさなきゃダメじゃないですか!」
勢いよくテーブルを叩いた。お猪口の中の酒が波打つ。
「私にできる事があれば言ってください。何でもしますから」
「島本くんに迷惑はかけられないよ」
「遠慮してる場合ですか! 課長の事見えるの私だけなんですよ。何でも言って下さい!」
「何でもと言われてもね」
課長が気まずそうに頭をかく。
「やっぱり島本くんに頼めないよ」
「頼んで下さい」
「でもな……」
「私はしっかり者の島本くんですよ。安心して任せて下さい」
ポンっと拳で自分の胸を叩き、真っすぐに課長を見る。
課長がハッとしたような表情を浮かべ、何かを決めるように頷いた。
「わかったよ。じゃあ」
課長がもごもごと口を開いた。
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