6 すれ違い

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 講義の後は彩さんをこっそり尾行し、図書館前の中庭まで課長と行った。  その場所はあまり人目につかなそうだった。 「沢木だ!」  課長に言われて、視線を向けると、彩さんが一人でベンチに座っている所に沢木がやって来た。  彩さんが沢木を見た瞬間、頬を緩ませて、幸せそうな表情を浮かべた。 「彩、今日もお弁当作って来たよ」  沢木がお弁当の包みらしき物を彩さんに渡した。  えっ。沢木が彩さんにお弁当を作ったの? 「かずくん、忙しいのに今日も作ってくれたの?」 「僕の料理が好きって言ってくれたから、調子にのってね」  講義中の真面目な顔とは違う、緩い表情で沢木が笑う。  彩さんの事が好きそうだ。 「じゃあ、彩、またあとで」  沢木が彩さんの頭を撫でて立ち去る。  彩さんは大切な人を見るような目で沢木の背中を見ていた。  視線や仕草から沢木の事が本当に好きだと伝わってくる。  彩さんの気持ちがわかる。  私も好きな人がいるから。  隣に立つ課長の横顔を見ていたら、課長がこっちを見た。  目が合った瞬間、ドキッとする。 「島本くん、沢木を追うぞ」  課長は怒ったように言い、歩き出した。  慌てて課長の後を追った。
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