139人が本棚に入れています
本棚に追加
講義の後は彩さんをこっそり尾行し、図書館前の中庭まで課長と行った。
その場所はあまり人目につかなそうだった。
「沢木だ!」
課長に言われて、視線を向けると、彩さんが一人でベンチに座っている所に沢木がやって来た。
彩さんが沢木を見た瞬間、頬を緩ませて、幸せそうな表情を浮かべた。
「彩、今日もお弁当作って来たよ」
沢木がお弁当の包みらしき物を彩さんに渡した。
えっ。沢木が彩さんにお弁当を作ったの?
「かずくん、忙しいのに今日も作ってくれたの?」
「僕の料理が好きって言ってくれたから、調子にのってね」
講義中の真面目な顔とは違う、緩い表情で沢木が笑う。
彩さんの事が好きそうだ。
「じゃあ、彩、またあとで」
沢木が彩さんの頭を撫でて立ち去る。
彩さんは大切な人を見るような目で沢木の背中を見ていた。
視線や仕草から沢木の事が本当に好きだと伝わってくる。
彩さんの気持ちがわかる。
私も好きな人がいるから。
隣に立つ課長の横顔を見ていたら、課長がこっちを見た。
目が合った瞬間、ドキッとする。
「島本くん、沢木を追うぞ」
課長は怒ったように言い、歩き出した。
慌てて課長の後を追った。
最初のコメントを投稿しよう!